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キミガダイスキ!!-10
両膝を立てた爽は毅史にしがみついて、薄く開かれていた唇に再びたどたどしいキスをした。
あまりにも幼い口づけに毅史はクラスメートや家族の前では決して見せない笑みを浮かべる。
そして彼は怒ったような、それでいて安堵したような口調で言った。
「駄目なわけねぇだろ」
「シャツ、脱がしてもいい?」
「どーぞ」
爽はぎこちない手つきで毅史の着ているシャツのボタンに手をかけた。
一つずつ外すにつれて鼓動は加速し、露になっていく浅黒い肌に心を蕩かされそうになる。
体操着に着替える時に盗み見していた場合と比べ、間近にすると迫力があった。
爽は我慢できずに小さく喉を鳴らすと鎖骨に指先を這わせた。
「高比良君って……すごい……」
息が詰まりそうになる。
高比良君の体温、息、視線、何もかも全部愛しい。
何か、もっと、触りたい。
爽は這わせていた指先を下降させると心臓の辺りで止めてそこに顔を寄せた。
「舐めても……いい?」
毅史は何も言わなかった。
仄赤く染まった目元に隠せない媚態を翳した爽は、膝を崩し、胸に頬を押しつける。
唇を開き、しとどに濡れた舌を差し出して、恐る恐る突起に触れた。
用心深い子猫を彷彿とさせる仕草で、そっと、淡い縁を舐る。
クチュ、と湿っぽい音を立てて、果実みたく潤んだ唇をそれに被せた。
「ン」
一度口をつけてしまえば警戒心は不要となった。
後はただがむしゃらに熱中するだけ。
「触っていい……?」
危うい熱に魘された眼差しを向けられ、爽のうなじに手をあてがっていた毅史は、返事をする代わりにある行動に及んだ。
「あ」
毅史の膝頭を掴んでいた手がそこへと導かれた。
衣服を隔てて感じたその熱い塊に、爽は素直に興奮を抱いて、切れ切れに嘆息した。
「すごい、高比良君の」
掌でその形を確かめた途端、爽はどうしようもない気分に囚われた。
「ッ、僕、また……」
貪欲な自分自身に言葉を失った爽は恥ずかしげに頭上の三白眼を仰ぎ見た。
「わッ」
毅史は無言で爽を抱え上げた。
またも両膝を立てる格好となった爽は彼の肩口を掴む。
前液に塗れたソレを愛撫されると、ピクンと妖しげに腰を揺らし、首筋に深く顔を埋めた。
毅史は粘ついた雫を指先にたっぷり纏わせると、頼りない腰のくびれから、秘められた場所へと手を進めた。
「え、あ……」
グチュッ。
毅史の中指が蕾に突き立てられて内部へと押し進められた。
体内へと侵入した異物の存在感に爽は仰け反った。
毅史の首根っこに抱き着いて身を捩り、苦しげに悶絶する。
指先がある箇所に届くとあからさまな嬌声を上げて目尻に涙を滲ませた。
その箇所ばかりをしつこく苛まれると淫らな蜜をどっと垂れ流す。
爽の汗ばんだ体を正面で受け止めている毅史の眉間には苦痛の皺が寄せられていた。
「ッ……もう無理」
屹立した自分の楔を手早く外気へと取り出すと、毅史は座った体勢のまま、爽の体をもう一度抱き上げた。
指とは比べ物にならない大きさのソレが爽の後孔を抉じ開けて、一気に奥へと押し入る。
爽は声にならない悲鳴を発し、毅史は歯を食いしばった。
「ッ……!」
爽の奥深くにただ呑み込まれたままでいるのはつらい。
毅史は爽をベッドに倒した。
ギシ、とベッドが派手に軋む。
激しい摩擦が体内で起こって、爽は弓なりに背中を反らした。
「あ、あ、あ……ッ」
爽は力一杯毅史の頭を抱きしめた。
「爽……」
あまりの痛みと快感に目を開ける事はできなかったが、自分が虚脱する寸前に紡がれた彼の呼び声を聞いて、爽は思った。
……僕、高比良君と一つになったんだ……。
月曜日、目覚めの良い朝を迎えた爽は定時通りに家を出て学校に向かった。
「爽ちゃん!」
眩しい陽射しの降り注ぐ通学路を歩いていたら、矢庭に後ろから飛んできた声。
振り返れば新野が駆け足で街路樹の下をやってくるところだった。
「おはよぉ、今日も可愛いねぇ」
「そんな事ないと思うけど」
いつもと違わない朝の挨拶を口にした新野であったが、立ち止まっていた爽の顔を近くで見るなり、眠たそうにしていた眼を頻りに瞬かせた。
「あれ、今日は一段と可愛い、何か生き生きしてる」
新野の言葉に爽は笑って「今日、いい夢を見たから」と、くすぐったそうに答えた。
「へぇ、いいなぁ。ところでこの前は一体どうしたの? いきなり帰られて俺寂しかったよぅ」
新野の質問責めに合いながらも爽は校門を通り抜け、まだ生徒が疎らな数しか登校してきていない校内へ進んだ。
「あの橘って奴、言ってる事が支離滅裂で病気になりそうだったよ、俺……」
新野の愚痴を聞いていたらあっという間に教室に到着した。
窓が開かれた教室は照り輝く太陽の光をいっぱいに取り込んで、すでに席に着いていたクラスメートの表情を明るく彩っている。
せっせと友達に挨拶している新野の肩越しに爽は彼の姿を見つける。
彼は窓辺に背中をもたれさせて音楽を聴いていた。
二学期になって初めて見かける濃紺のブレザーを羽織って、長い足を悠々と床の上に伸ばしている。
逆立った黒髪は日の光に照らされ、肩の辺りには小さな日溜りができて。
彼はこの日常的な風景の中で誰よりも輝いて見えるようだった。
おもむろに顔を上げた彼と視線がぶつかり、爽は笑って、窓際の自分の席へと駆け寄った。
「はよ、爽」
彼がイヤホンを外す。
爽はイスに座り、机の上に身を乗り出して、自分にしか向けられない笑みを嬉々として見つめる。
いつもと変わらないようでいて、確かに何かが違う、愛しい一日の始まりだった。
end
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