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双子チェンジ!!-2

校門前の身だしなみチェックで引っ掛かり、説教というより、あの葉月君が一体どうした何かあったのかと教師らに問い質された草介。 何とか誤魔化してやっと解放されて職員室を出てみれば。 「葉月。大丈夫?」 あ。あ。あ。 タケくんだ!! 身長186センチの運動部エース、でも普段はおっとりナマケモノ男子、うわぁ、会いたかったー!! 「タケくんっ」 友達が職員室で説教されていると聞き、廊下で待っていた帯屋武友(おびやたけとも)に嬉しさの余り草介はつい抱きついた。 「どうした。葉月。そんなに。ひどく怒られた?」 あ、やっば、葉月はこんなことしねーか。 オレは今、双子のバカの方じゃない、小山田葉月だ。 蟻だって踏み潰せない、誰にでも何にでも優しい、マイナスイオンがだだ漏れな癒し系。 「それに。その髪」 「あ……っ今、両親が旅行中で、つい浮かれちゃって、染めちゃっ……染めてしまいました?」 「染めてしまいました」 出た! タケくんお得意のオウム返し、初めて生で聞いちゃったよ、やっぱ癒し系葉月の友達にもサイコーに癒される~、堪ら~ん! ちなみに双子は自分が双子だと学校では伝えていない。 うっかり洩らせば「写真見せて」「やっぱシンクロすんの?」「向こうが痛かったらこっちも痛い?」など色々と質問されて何かとめんどくさいから、敢えて黙っていた。 短縮で授業は午前中までだった葉月はいつもより早い昼休みに入った。 「今日は少ないんだな」 「えっ?」 「食後に甘いモン食いたいからって、プリンとかドーナツ、追加するだろ」 食堂の長テーブル端で佳織と向かい合って月見うどんを食べていた葉月は咄嗟に答える。 「お金が……っ、金、足りなかったんだぁ」 これはちょっとおバカ過ぎたかも、ごめん、そうクン。 「へぇ。じゃあ甘くねぇけど。やるよ、コレ」 食事をとるときはポニーテール結びする佳織、自分の皿から葉月の丼へトンカツを一切れ移動させた。 「後で腹へったーって泣きつかれても困るからな」 一つ年上の佳織の言動に葉月はいちいちどぎまぎしてしまう。 そうクンに聞いていた通り、ううん、それ以上だ。 たった一つ年が違うっていうだけで、カオリさん、すごく大人っぽい。 髪の色、目立つけど、似合ってるし。 両耳のピアスもキラキラしててかっこいい。 髪を結び直す仕草も。 ポケットから取り出した携帯を翳す何気ない瞬間も。 「ん?」 あまりにも真っ直ぐに自分を見つめてくる葉月に佳織は首を傾げ、その仕草一つにもご丁寧にどきっと胸を高鳴らせた葉月。 「あ。なぁ、草介」 「はい……っ、じゃなぃ、な、なんだよ、カオリン?」 「今日、また後でいつもの付き合え」 え? いつものって……なに? 「うわぁ!これ全メニュー揃ってんじゃ!?」 草介は葉月でいることもすっかり忘れて素で感激した。 洒落たカフェテリア、彼の目の前には様々なワンプレートごはんがずらり並んでいて、武友が一つずつ順番にもぐもぐ食べていた。 「どれもうまそ!ウチのボロ食堂とレベル違い過ぎ、ッ、んがぐぐ」 「葉月。今日は。元気だな」 「あーーーーー、か、空元気ってやつ?」 「空元気」 昼休みをみっちり使ってもぐもぐ食事し、終了五分前に綺麗に食べ終わる武友、斜め向かいに着く草介に一つのプレートを差し出してきた。 「普段の葉月は。あまり食べない。けど。空元気の葉月なら。食べる?」 「食べる!!空元気の葉月食べます!!」 うわー、おいしー、それにやっぱタケくんサイコー!! カオリンだったら絶対くれないもん、つまみ食いしたら俺の皿から容赦なく倍とられるもん。 「はい!ありがと!」 「……半分。それ以上。たくさん。食べたな」 「ごちそーさま!!」 頬にごはんつぶをくっつけて満面の笑顔を浮かべる草介に武友もつられて小さく笑うのだった。 こんなの初耳だよ、そうクン。 「息止めてねぇか、草介」

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