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双子チェンジ!!-6

「あれ、そーすけ、また染めたの?」 「やっぱこっちのが似合うよ、落ち着くよ」 「ほえーーーー」 朝、学校に到着する前に通学路でクラスメートに口々に言われて気もそぞろに返事をする草介。 『葉月……。また、明日』 今頃、葉月とちゅっちゅやってんのかな、タケくん。 タケくんとの仲、ナイショにされてむかついたから、昨日から葉月とはあんま喋ってない。 ずるい、ずるい、ずるい。 同じ双子なのに。 タケくん、オレにちょーだいよ、葉月。 「よぉ、草介」 最前列の席に着いたら佳織がやってきた。 草介はぼんやり一つ年上の友達を見上げる。 「へぇ、ほんと、よく……」 「ほえ?」 「いや、何でもない、いつものバカ面見にきただけ」 「うっさいカオリン!!」 草介は膨れっ面になって喚き、いつも通りの友達に佳織は笑いかけ、自分の席に戻った。 双子、か。 何から何までそっくりだな、中身を抜かして。 『オレは……ボクはそうクンじゃ……小山田草介じゃないんです』 足を組んだ佳織は最前列で他のクラスメートに髪をいじくられている草介の横顔を見、空き教室での昨日の出来事を思い出す。 『ボク、双子の兄の小山田葉月です』 佳織のお膝上でしょ気たように伏し目がちになった葉月は自ら<入れ代わりごっこ>していたと明かした。 昔の<入れ代わりごっこ>ならば入れ代わっていたことは誰にもナイショ、双子だけの秘密で毎回締め括られていた。 葉月は偽り続けて佳織を騙し通すことがどうしてもできなかった。 『どうして自分からわざわざバラしたんだ?』 『……』 草介と双子の葉月。 また会う約束をした。 ちゃんと絵を描き切らせてほしい、と。 そんなの口実だけど、な。 「おはよう、タケくん」 「ッ。おは。おはよ。葉月」 「あっ。ほらほら、ジュース零れてるよ?」 朝、教室にやってきた葉月が一番に武友の元へ向かってみれば。 友達はカフェオレを飲んでいる途中でパックをぎゅううっとやってしまい、中身がびゃっと飛び出てしまった。 「汚れちゃったね。はい、ハンカチ」 「あ。ありがと。うん」 タケくん、ちょっと様子がおかしい。 もしかして、昨日、テンションあがっちゃったそうクンが暴走したのかな? そうクンもそうクンで昨日帰ってきてからずっと変だし。 「あ、あのね、タケくん?」 「は。はい」 「昨日、ボク、えーと、その、何だかおかしかった?」 首を傾げるようにして問いかけてきた葉月の黒髪がさらりと靡き、武友は、すぅっと目を細めた。 「髪。戻ってる」 「あ、うん。昨日のボク、どうかしてたみたい」 「どうかしてた」 「でも、もう元通りだからね? 今まで通り普通に友達でいてね、タケくん?」 「今まで通り。普通に友達」 草介が何か仕出かしてしまったのかもしれないと思った葉月はフォローのつもりで言ったわけだが。 何だか心までほろ苦くなる武友なのだった。 「そうクン。今日もしゃべってくれないの?」 「……フンだ」 「そうクンってば」 「ッ、わぁぁッ、こちょこちょすんなっ、葉月のすけべ!!」 「ッ、ボクすけべじゃないもん!!」 二人はやっぱり仲よし双子。

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