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双子チェンジ!!-7

「ごめんね、ボク、カオリさんに言っちゃった」 「……葉月のすけべ」 「ッ、だからなんでボクがすけべになるのっ?」 「タケくんとえっちなことしてんじゃんっ!」 「…………え?」 「タケくんと付き合ってんじゃんっタケくんとべろちゅーしてんじゃんっ」 「べろ……っちゅー……?」 「…………え?」 「付き合ってるわけないよぉ……タケくんとは友達だもん」 「で、でも、だって、ロッカールームであんな……っ」 「わ、わかんないよぉ、ボクわかんないよぉっ」 「オレだってわかんないよぉーーーー!!」 双子が<入れ代わりごっこ>でチェンジしてしばらくが経過した。 今日は二学期終業式。 そして。 「タケくん」 大掃除が済み、帰りのHRも終了して笑顔が零れ落ちる生徒達、その中で葉月はほんの少しだけ緊張した面持ちでいた。 部活に向かおうとしていた武友はぎこちなく振り返る。 「今日……待ってるね?」 「あ。うん」 「迷ったら電話してね?」 「うん」 武友はこっくり頷き、部活仲間といっしょに教室を出て行った。 ふぅっと一息ついた葉月。 気もそぞろにクラスメートにバイバイして一人家路につく。 この間、久し振りに夫婦二人きりで出かけた旅行がそれは楽しかったらしく、今回、何とクリスマス旅行へ出かけていて両親が不在の自宅に帰宅した。 「おかえり、葉月」 葉月を出迎えたのは双子の弟の草介……ではなく。 「た、ただいまです、佳織さん」 草介と同じ学校に通う双子弟のクラスメートである佳織だった。 なんか変なの、佳織さんに出迎えられるなんて。 靴を脱ごうともせずに自宅の玄関でぼんやり自分を見つめてくる葉月に佳織は苦笑した。 本日こちらも終業式で一足早く小山田家にやってきていた彼は一度も染められたことがない黒髪をそっと撫でた。 「自分ちだろ。上がらないのか?」 『ほら、葉月』 『は、はい』 『絵、できあがったぞ、どうだ?』 水彩絵の具で瑞々しく描かれた自分自身。 照れくさくて嬉しいながらも淋しそうな顔で眺めた葉月。 もう会う必要がなくなるのかと、内心、しょんぼりしていたら。 『じゃあ次は普通にデートするか』 そこは佳織がアトリエとして使っている江迎家の離れだった。 ちょこちょこお邪魔していた葉月は雑然とした洋室のほぼ中央で頬を赤くして硬直し、佳織はそんな彼の黒髪を撫で撫でしながら言ったのだ。 『俺とお前、付き合ってるんだから。デートするのが普通だろ?』 「ウチでイチャイチャするな~~」 玄関で甘々なムードに浸っていた佳織と葉月が揃って視線を向ければ。 自分の部屋から恨めしそうな眼差しで覗いている草介とバッチリ目が合った。 「そ、そうクン」 「お前が呼んだんだろうが」 普段着に着替えるのをさぼって学ラン下にパーカーを着込んだままの草介はブスッと頬を膨らませる。 「呼びましたよー。だって葉月一人だけじゃ頼りないんだもん」 「……どうせ頼りないお兄ちゃんですよーだ」 「お。拗ねる葉月ってレアだな」 「だからイチャつくなってば、カオリン!」 あれから草介も武友もずっと様子が変だったのだ。 『葉月、タケくんどうしてる? 今日どんなだった? どんなかんじ?』 『葉月。あの。その。えっと。何でもない……』 二人はかなり過激なキスをしたそうで。 なおかつ。 『えっ? キスだけじゃないの……? 他に何したの?』 『……せ、せ、せ』 『セックスしたのか?』 『『わぁぁぁぁっっ』』 同じ反応を返した双子に佳織はつい笑ってしまった。 葉月はまっかっかで。 草介も草介で茹でダコ状態だ。 『オレ、てっきり葉月とタケくんがナイショで付き合ってたのかと思って……だから……』 『それ本当か、葉月』 『ちが、違うよ佳織さんっ、だからっそうクンっ言ったよねっ? タケくんとは友達だって言ったでしょっ? ほんとばかなんだからっ』 『『わーーーーーっっ』』 以前、アトリエで双子同士が涙ながらにポカポカとケンカする姿が正直面白くて佳織は今でも思い出し笑いしそうになる。 そして今でも気になっていることがある。 「武友って奴、本当にただの友達か?」 「……佳織さん、それ最近毎日聞いてるよ?」 つまりは、双子が入れ代わったあの日、草介と武友は互いにどぼんと恋に落ちてしまったらしい。 葉月と佳織みたいに。 そこで当然行き着いた結論というのが。 「タケくん、部活が終わったら来るからね?」 「お、怒んないかな、騙されたーって、傷つかない?」 「……どっちも可能性あるよ、そうクン」 「……うわーん」 武友に<入れ代わりごっこ>していたことを打ち明けようと決めたものの、どんな反応をされるのか不安で怖くて、草介は今にも泣きそうになっている。 そんな片割れに葉月は頭ポンポンして言う。 「ボクだって怖いよ。タケくんのこと、いっしょに騙したんだもん。今だってタケくんは、その、ボクと……せ、せ、せ……え、えっちしちゃったって、思ってるわけだし」 「それ面白くないな」 「か、佳織さん……ともかく。いっしょにちゃんと謝ろう?」 嫌われるかもしれない。 それでも。 「このままで終わっちゃ嫌だもんね?」 葉月の頭ポンポンに促されるように草介はコクンと頷いた。

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