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双子チェンジ!!-9
「タケくん、今日泊まっていきなよ!」
その場の思いつき発言に葉月は目を丸くさせた。
「あのね、そうクン……タケくんだっておうちでクリスマスの準備、してるんじゃない? 家族といっしょにごはん食べたりするんじゃないのかな」
「葉月だってカオリンに泊まってほしーんじゃないの!?」
「う……」
「泊まっていいのなら泊まりたいぞ」
「え……」
「俺も。大丈夫。泊まれる。お泊まり、したい」
「やったーー!じゃあ決まり!」
かくして急なクリスマスお泊まりが決定した。
「悪いな、風呂、先に使わせてもらって」
お、お風呂上がりの佳織さん……っ(ぷしゅーーーッ)。
「お風呂。きもちよかった。タオルもふかふか。きもちいい」
癒やされるよっ、オレ癒され過ぎちゃうよっ、タケくんっ。
「じゃあボク達もそろそろはいろっか、そうクン」
「ほーい」
「おい? まさか葉月と草介って?」
「いっしょに。お風呂?」
明らかに驚いている佳織と武友にキョトンした二人は揃って頷いた。
「ボクとそうクン、ずっといっしょにはいってるよ?」
「一人でお風呂って、どっちかが病気してるか修学旅行のときくらいかなー」
軽くショックを受けている佳織と武友、不思議そうにしながらもお風呂の準備をして浴室へ向かう双子を神妙に見送った……。
「ねー。葉月」
「うん?」
「タケくん、カオリン、どこで寝てもらおっか?」
「ッ……」
いっしょに湯船に浸かってポカポカ上気していた葉月がさらにぷしゅーーっとなり、つられて草介までぼふっと真っ赤になってしまった。
「やらしっ、葉月やらしー!」
「しーーーっ!」
慌てた葉月に口を塞がれて「もごっ」と言葉を詰まらせた草介。
「リリリ、リビングで寝てもらうもんっ、ソっソっ、ソファで寝てもらうもんっ」
今にも沸騰しそうな様子でめちゃくちゃ動揺している葉月、もごもごと何度も頷いてあげた草介……。
「暖房はつけとくから。毛布、もう一枚持ってくる?」
「暖房、消していいぞ。毛布は一枚でいい。葉月、ありがとな」
「タケくん、ソファだと足食み出ちゃうね、寝づらくなーい?」
「多分。大丈夫。ありがと、草介」
「「「「「おやすみ」」」」
日付が変わる頃に消灯を迎えた小山田家。
清しこの夜、クリスマスの夜は穏やかに過ぎて……?
キィ……
寝るに寝られずにベッドで寝返りばかり打っていた双子の片割れはその些細な音色にどきっとした。
壁の方を向いたまま暖かい寝床でピシ……ッと固まっていたら、近づいてくる気配、比例して早くなっていく胸の鼓動。
ギシ、とベッドを重たげに軋ませて毛布とお布団の下に潜り込んできた彼。
横向きに固まっていた双子の片割れを背中から抱きしめる。
冬の夜にぴたりと密着して体温を分かち合う。
「あったかい」
武友はシャンプーの香りが残る茶色の髪に頬擦りして呟いた。
身長186センチの運動部エースに、ぎゅうううう……っと抱きしめられ、体の強張りが解けていった草介はおずおずと肩越しに振り返る。
「タケくん……」
視線が合うとお互い照れたように笑い合って。
ちゅっとキスした……。
「……佳織さん」
隣室のドアが紡いだ開閉音を耳にしていた葉月は居ても立ってもいられなくなってベッドを抜け出した。
そっとドアを開け閉めし、冷え込んだ廊下にぶるっと肩を震わせ、ぺたぺたと床を進んで静まり返ったリビングへやってきた。
ローテーブルを囲むようにしてL字に並んだソファ、一つは大きく毛布が捲れていて、もう一つには。
「帯屋、草介のところに行ったのか」
上下とも制服のまま寝そべっていた佳織はすぐそばにちょこんと跪いた葉月の黒髪を優しく撫でた。
「うん……二人、いっしょにいる」
「寒いだろ?」
「え……あ、うん」
「ほら」
佳織が毛布を大きく持ち上げ、お招きされた葉月はぎこちなく甘んじて、一つ年上である恋人の温もりに満ちたそこへもぞもぞ潜り込んだ。
「狭いな」
「……でも、すごくあったかい」
「そうだな」
「……佳織さん」
仔猫がちっちゃな爪を立てるみたいにセーターにきゅっとしがみついて葉月はおずおずと顔を上げた。
一つ年下の恋人に無言でじっと見つめられて、佳織は、ちょっと不器用な催促に少しだけ笑って。
そっとキスした……。
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