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俺の狼に手ぇ出すんじゃねぇよ/童話パロ擬人化/俺様猟師×健気狼耳

■この話は別シリーズ「The Story of.....」から移動させた作品です そこは自然の恩恵溢れる豊かな森。 頭上では木の実をほっぺたいっぱいに詰め込んだリス達が枝から枝へ駆け抜け、地面ではどこからか調達してきた角砂糖を背負った働きアリ達が列を成している。 さえずる小鳥達。 ふわふわ舞う白い綿花。 ピチチチチと鳴きながら、危なっかしげに飛ぶ、飛行練習中の小さな小さな小鳥。 木漏れ日に透けた羽の先がきらきら、きらきら。 ああ、危ない、落っこちそう! バランスを崩してあわや地面に落下しそうになった小鳥。 そんな小さな小さな生き物を両手で優しく受け止めたのは。 それはそれは瑞々しい白磁の肌。 色鮮やかな唇に、濡れたように黒い睫毛。 ピィピィ鳴く小鳥をそっと包み込む華奢な両手、愛情深い聖母じみた眼差し。 「怪我しなくてよかった」 さらさらした灰色髪から突き出た灰色の狼耳。 そう、彼はこの森に住む狼青年のイレイズ。 人狼(♀)と人(♂)の間に生まれ落ちた、心優しい混血種であった。 「イレイズ!」 不意に響いた甘ったるい声が森の澄みきった静寂をぶっ壊す。 両手の中で休んでいた小鳥が慌ただしげに危なっかしげに飛び去り、木の巣穴に戻ったのを見届けてから、イレイズは振り返る。 そこにいたのは。 暗色の森中ではひどくショッキングな赤を纏う十代後半と思しき少女。 かなりのミニスカですらりと長い足には黒ニーソ、可憐に咲く草花をヒールローファーで容赦なく踏み潰し、困ったように微笑むイレイズの真正面までやってくる。 「隣村のおばあさまにワインとチーズを届けに行く途中なんだけど、だるくって」 「おばあさん、きっと赤ずきんのことを待っているから、道草は駄目だよ?」 「あ、そーだ! ねぇ、イレイズ、いっしょに森飲みしましょ?」 優しいイレイズの注意を無視して、するりとその腕に腕を絡ませ、赤ずきんはいつものように片思い相手の狼青年を誘惑する。 「赤ずきん、君は未成年だよね……? それとも年齢詐称しているの……?」 「えー? さしょうって、なーに? イレイズって頭いいのね、もっと色々教えて!」 「赤ずきん……」 「イレイズから離れろ、このビッチ」 いきなり二人の背後で聞こえた剣呑な声。 この森一帯をテリトリーとしている猟師のスターだ。 スマートな英国紳士風の格好に美しい毛皮を引っ掛け、立派な猟銃の銃口を……赤ずきんに向けているではないか。 「……スター、なんてことを、危ないから今すぐ下ろして?」 「危ないのはお前だ、イレイズ、ビッチが今に襲い掛かってくるぞ」 「この異常者、変態、サイコ野郎!」 「うるせぇ、酒場で聞いたぞ、この寸止め女、その辺のビッチより胸糞悪ぃビッチが」 「インポ野郎!!」 睨み合いながら聞くに堪えない口喧嘩を続ける人間二人に混血イレイズは困り果てる。 「酒癖も女癖も悪ぃお前の父親に教えてやろうか、ビッチ娘がまた太腿出して森をうろついてたってな」 「ひどい……イレイズ、こいつ最低最悪、私を泣かせるの……」 「嘘泣きやめろ、イレイズから離れろ、本気で撃つぞ、この豚売女が」 「うるさい、ゲス雄豚!!」 森に夕闇が迫りつつあった。 複数のため息を押し殺したイレイズは銃口と赤ずきんの間に割って入ると赤い少女に言う。 「赤ずきん、今日はおうちへお帰り、そして明日ちゃんとおばあさんのところへ行ってあげるんだよ、いいね?」 「……イレイズがそんなに言うなら」 「スター、もう二度と彼女に銃口を向けたらいけないよ? いいね?」 「優しすぎんだよ、お前」 赤ずきんは不服そうに頬をぷーっと膨らませ、スターは苦虫を噛み潰したような顔で猟銃を持ち直す。 夕闇迫る森の向こうで三日月が哂っていた。 風の強い夜。 凍てついた、昼よりも騒がしい、ざわざわと波打つ森。 木々に閉ざされるようにして建つ丸太小屋がある。 スターの家だ。 割と男前のくせに偏屈で人嫌いな彼は敢えて村から離れた森の懐に住居を構えている。 そんなスター宅を訪れるのは。 「あ……スター……」 恋人のイレイズくらいだ。 ゴージャスな毛皮が敷かれたベッド、素肌に触れる感触は別格、そして暖かい、裸だろうと。 「はぁ……ぁ……はぁ……」 息を乱しながら抱き合って口づけを繰り返すスターとイレイズ。 時々、イレイズの狼耳がぴくぴく震える。 「ん……っ……ん……」 しなやかな裸体をさらに抱き寄せ、隅々まで白磁の肌を片手で愛撫しながら、スターはもっと深い口づけに至る。 男前猟師、着痩せするタイプのようだ、研ぎ澄まされた筋肉質の体は華奢な狼青年を易々と覆い隠してしまう。 散らばる傷は殆ど獣によるもの、ちょびっと人災もあり。 「……はぁ……」 しっかり繋がっていた唇を解いてみれば、いつにもまして色鮮やかな唇が上擦ったため息を零す。 ぺたんと伏せられがちな狼耳。 半開きの双眸は色っぽく、本人の意思とは関係なしに、スターを煽る。 「ああ……本当、きれいだな、イレイズ」 「……スター」 「俺が丸呑みにしてやりたい」 戯れに細い手首を掴み、腰を撫で、頬を舐める。 「……くすぐったい、スター」 ああ、本当にきれいでかわいくて、こいつは、俺だけのもの。 俺の狼。 「……クソ生意気な女となんか話すんじゃねぇよ、イレイズ」 「それは……まさか赤ずきんのこと?」 「色気づきやがって、挑発的な赤ばっか着やがって、あのビッチ」 「スター」 頬を赤らめながらもイレイズはスターの言葉を窘める。 誰に対しても優しい恋人を上目遣いにちらりと睨み、スターは首筋に顔を埋める。 「本気で引き鉄を引きたくなる」 「駄目だよ、スター」 「そのうち結婚してくれとか言い出すぜ」 「…………」 「まさか。もう言いやがったか、あいつ」 「…………うん」 「あのクソビッチ……明日また見かけたらシチューの具にしてやる」 スターの止まらない口の悪さにイレイズはシュンとなる。 スターがこうなのは、自分のせいなのだと、悲しくなる。 自分が恋人を苛々させているのだと。 「それかお前を喰っちまおうかな」 「え?」 「なぁ、イレイズ?」 芳香のしそうな柔らかな首筋を美味そうに舐め、軽く、歯列を食い込ませる 「ンっ」 些細な刺激にイレイズの狼耳がまたぴくん、ぴくん。 「お前、美味そうだもんな……俺の胃袋に攫って独り占め、案外いい考えかもしれねぇな」 頻りに首筋を舐ってくるスターにぞくぞく甘く震えながらも。 先祖代々伝わる猟銃がずらりと飾られた壁を見つめ、イレイズは、そっと返事を。 「……いいよ、スター」 貴方になら、オレ……食べられても……いい。 視線を上げれば何とも言えない……確かに食指をそそる切なげな眼差しをしたイレイズの綺麗な顔があった。 瞬く間にスターの下肢にぶわりと燃え広がった熱い疼き。 欲望のままに華奢な恋人を少々手荒に毛皮の上へどさりと押し倒した。 「……あ」 後孔に押しつけられた、雄々しく怒張する熱塊の感触にイレイズの頬はさらに火照った。 いきなり両足を開かされて何もかもがスターの目前に曝されると、どうしても毎回恥ずかしくなり、顔を逸らしてしまう。 いつも初々しい反応を見せるイレイズに毎度ながら素直に興奮するスターは恋人馬鹿だ。 「お前が俺を食うんだろ、イレイズ?」 「ッ……」 「ここで、俺のを、食らうんだろ?」 脈打つ熱塊が力任せに押しつけられていたかと思えば。 孔を押し拡げ、肉膜のなかへ、どんどん挿入ってくる。 恥ずかしいのに、毎晩といっていいほど続けられる営みでイレイズはスターのかたちをすっかり覚え込んでしまった。 「ほら……なんだかんだ言いながら……美味そうに食ってる」 「やめ、て……スター……」 恥ずかしさの余り、イレイズは、ぽろっと涙した。 スターの逞しい熱塊がすべて我が身に突き刺さり、律動が始まると涙がぽろぽろ止まらなくなった。 「あ、ん……っ……ん……ぁッ」 抑えたいのに、どうしても零れ落ちる風な嬌声にスターの体はより発熱を帯びる。 同じく熱くうねるイレイズの肉のなかを鍛え抜かれた肉茎で貪欲に探り尽くす。 「あん……ッ」 「イレイズ……もっと鳴けよ」 「やっぁ……スター……ッそこ、だめ……っ」 「俺にだけ見せろ、聞かせろ、俺だけに……感じろ」 イレイズが「だめ」と言った場所を熱塊の先端で執拗に擦り上げながら。 汗ばむ掌でイレイズ自身をすっぽり包み込むと淫らな上下摩擦を始めた。 「あぁんっ」 質のいい毛皮に片頬を擦らせ、片腕で顔を隠し、イレイズは一際甘い鳴き声を。 すかさずスターは顔上に翳されていた片腕をベッドに押さえつけ、捩れる恋人の様を思う存分見つめた。 「やだ……見ない、で……んっぁっぁっ……ぁぁぁっ!」 音が立つくらいの激しい抽挿と愛撫にイレイズは下腹部を痙攣させた。 「あっあっもぉ……っスタァ……ッ……あ……!」 スターを呼びながらイレイズは達した。 一気に滑りを帯びたスターの片手。 急激に際どい収縮を始めた恋人のなかに、スターは、ぎっと歯を食い縛る。 何度か荒々しく肉奥を貫き突き、絶頂寸前まで自身を追い詰め、解放を予感すると。 イレイズのなかから一思いに脱した。 「あ……っ!!」 全身が紅潮しきった瑞々しい肌に散らされたスターの……白濁した飛沫。 まるで恋人に印をつけるように、しっかり所有の意を示すかのように、それはそれは濃いものがイレイズに注がれたのだった……。 「イレイズ!」 今日も森の中に響き渡る赤ずきんの甘ったるい声。 何故かスターに動くなと言われていたイレイズは、首を傾げながらも、こちらへ笑顔でやってくる彼女を困ったように微笑みながら待っていたのだが。 ずぼ!! 「きゃー!? なっなによこれぇっ!!」 「単純ビッチが、まんまと引っ掛かりやがった」 「スター……今日はいやに朝早く出かけたかと思ったら。落とし穴を掘っていたの?」 「ほら、行くぞ、あんな尻軽女は放っておくに限る」 「ちょっとー!!」 「スター……駄目だよ……」 ずぼ!! 「あっ、スターっ、大丈夫?」 「……そうだった、あの女がどのルートで来るか絞れなかったから、もう一つ用意してたんだ、畜生」 自分がつくった落とし穴にまんまとはまったスター。 なかなかな深さの穴底で露骨に不機嫌そうにしている恋人に、イレイズは、つい微笑んでしまう。 貴方ってほんとう、オレの心を掴んで離してくれないね、愛しい猟師さん? 小さな小さな小鳥がピチチと羽を休めたイレイズの狼耳、ぴょこぴょこ、それは楽しげに喜びのリズムを刻むのだった。 end

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