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おばけでも好きさ/幽霊?×友達?

我に返ると俺は友達の咲哉(さくや)が住むアパート前に突っ立っていた。 雪の降る真夜中、右足を惜し気もなくコンクリートの上に曝して。 「……何だ、コレ」 俺は呆然となった。 全く持ってワケがわからない。 俺はどうしてここにいる?  そして今まで何をしていた?  お気に入りのスニーカーの片方は一体どこへ……? ああ、何だかヤバイくらいに寒い。 両腕を縮めて首をすぼめ、俺はとりあえず咲哉の部屋へお邪魔する事にした。 雪の吹き荒ぶ屋外で考え事をするのはアホらしい。 なので、奴にあったかいコーヒーでも出してもらって、順を追ってゆっくりと思い出そう。 そんで行方のわからないスニーカーを一緒に探してもらおう。 チリン、と鈴の音が鳴った。 何気なく顔を向けると、自転車に乗った女の子がまだ凍結に至っていない道路を走り抜けていくところだった。 自転車……。 俺は遠ざかっていく女の子の後ろ姿を見つめた。 見つめていたら、霞がかかった、どうにも覚束ない記憶の断片が脳裏にちらつき始めた。 そういえばさっきまで俺もチャリに乗っていた気がする…… 煙草が切れたから近くのコンビニまで、と思って…… 外に出てみたら雪が降ってたから、どうしようか迷って、でもせっかくジャケットも着込んでマフラーも巻いたから…… あれ、マフラーもなくなってるぞ。 「いや、待てよ、それで俺は……」 行く事にしたんだ。 往復で五分もかからないし、明日の朝飯も買わなくちゃならなかったし…… 隣の家の犬が吠えてたっけ…… 舌打ちして、チャリを走らせて……それで……。 「……」 俺はコンビニに行っていない。 すぐ手前の曲がり角を曲がろうとして、そしたら……車のヘッドライトが……。 その先の記憶は鋏でちょん切られたみたいに綺麗さっぱりなくなっていた。 「どうしたの、顔色悪いよ?」 ドアを開けた咲哉の開口一番がそれだった。 「や、あんまりにも寒いから……さ」 「まぁそうだけど……今日、芙美香(ふみか)ちゃんといるんじゃなかったの?」 あ、そういえばそうだった。 芙美香も煙草を持ってたけど、アイツが吸うのは軽すぎて嫌だったから、外まで買いにいったんだっけ……。 「……恭介(きょうすけ)?」 玄関口でぼんやりしている俺に咲哉は眉根を寄せた。 「……裸足だ」 「あ、これは……あはは、えっと」 「芙美香ちゃんに追い出されたとか?」 風呂上がりの咲哉は華奢な肩をぶるっと震わせて「まぁ、早く上がったら。コーヒーでも出すよ」と、言い、コンロにやかんをかけた。 俺はジャケットのポケットに両手を突っ込んだまま、どうしようもなく複雑な心境で咲哉の部屋に上がった。 俺は事故に遭ったんだろうか?

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