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おばけでも好きさ-2
消え失せたマフラーとスニーカーの片方、欠けている記憶、正に前後不覚というか何と言うか。
どうしたらいいのかちっともわからない。
そもそも成す術なんかあるのか?
それとも夢か、これは……。
「はい、どうぞ」
ぼんやりしている間に湯が沸いたらしい、コタツに入って放心していたら目の前にコーヒーカップを置かれ、俺は瞬きした。
「壁一点なんか見つめたりして、恭介らしくない。別れ話でも切り出されたの? あんなに仲よかったのに」
「えっと……うん、そう」
「へぇ。本当に? それで片方裸足で自分の部屋から飛び出したんだ。すごい気の動転ぶりだね。それも恭介らしくないけど」
パイプベッドに背中を預けて咲哉は喉を反らした。
俺は両手でカップを掴み、いつもと変わらない味のコーヒーを一口飲んだ。
とても熱い。
夢とは思えない温かさだ。
だけど体は冷え切ったままだ。
暖房の効いた部屋の中でコタツに入っているというのに、手足はただ冷たくて疎ましい虚無感を感じている。
「恭介、ジャケット脱いだら?」
「いんや、このままで……いい。俺、病気なのかも……狂ってんのかも」
「……どうしたの?」
「ちっとも、わかんねぇ」
どうして俺は咲哉のアパートに来たんだろう。
どうして彼女の芙美香の前じゃない?
家族のいる実家のところじゃない?
どうして、何で……。
その時、咲哉の携帯が鳴った。
咲哉は携帯をとって相手の声を聞くなり、じっと見守っていた俺の方を見やった。
「……芙美香ちゃん、恭介はここにいるけど。
人違いじゃない?
ちょっと待って、もう少しゆっくり喋って……うん……うん。
××病院に?
でも、ここにいるんだよ、実際。
替わろうか?
ほら、恭介……」
俺は差し出された携帯を受け取るや否や、通話を切った。
咲哉がきれいな二重の目を見開かせる。
その次に心持ち首を傾げて、薄い赤色の唇を開いた。
「事故ったんだ、俺」
俺は咲哉に何も喋らせるまいとして先に口を開いた。
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