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ウチの双子が俺溺愛で困る/イケメン双子×ガテン系育て親
とび職に勤める三十一歳の工藤巽己 は仕事を終えると真っ直ぐマイホームのオンボロアパートに帰宅した。
「おかえり、巽己くん!」
「巽己さん、おかえりなさい」
肉体労働に疲れ果てた巽己を出迎えたのは、オンボロアパートの一室にとんと似つかわしくない、美麗なるイケメン二人。
「今日、巽己くんの好きな甘口カレーだよ! オレ、頑張っちゃったよ!」
やや長めの髪をレッド系カラーに染め、両耳に複数のピアスをし、部屋の明かりよりも眩い満面の笑顔を浮かべた一朗 。
「一朗が頑張ったのは味見だけ。後はボクが全部担当しましたよ、巽己さん?」
ストレートの黒髪に銀縁の眼鏡、家にいるにも関わらず第一ボタンまできっちり締められた私服のシャツ、つまり優等生の雰囲気を嫌味なまでに放つ一弥 。
二人の顔はそっくりだ。
それもそのはず、だって二人は一卵性双生児。
その双子と全く似ていない、どちらかと言えばやさぐれた風な目つきの悪い巽己。
それもそのはず、だって、彼と双子は他人同士。
八年前、巽己はある女性と一緒になった。
双子は彼女の連れ子であった。
七年前、女性は彼らの前から突然姿を消した。
一年間、双子と共に過ごしていた巽己はその時決意したのだ。
双子は俺が立派に育て上げてやる、と。
「おい、カレーだけかよ、サラダはどうした、一日に一遍は野菜をとらねぇと」
手洗いとうがいを済ませた巽己は冷蔵庫から取り出した一玉のキャベツを華麗なる包丁捌きであっという間に千切りにした。
ミニトマトをさらに半分に切って彩りをちょんと添える。
「よし、食うか」
「はーい、いただきまーす!」
「いただきます」
ガタの来ているテーブルに着席して三人は手を合わせた。
双子は高校三年生になったばかりだ。
来年、卒業である。
先週、家族会議で進路についてどうするつもりなのか聞いたら双子は巽己にこう答えた。
「とりあえずホストかな!」
「双子ホスト、金になりそうでしょう?」
巽己はテーブルを「どん」と叩いて双子の意見を却下した。
あと一回「どん」しようものならテーブルは完全に崩壊するだろう……。
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