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獣耳なショタな/隻眼猟師×ぴゅあえっちな狼耳/けもみみおにしょた

猟師仲間の家を訪れたら不思議な生き物がいた。 「この間、森で拾ったんだ。お腹を空かせていてね」 友達であるディナイはそう言ってその生き物の頭を撫でた。 頭というか耳を。 ちっこい、ふわっとした、やたらでかい目をしたそいつにはでっかい耳がついていた。 狼のものとそっくりな獣耳。 「ほら、僕の友達のザギに挨拶してごらん?」 ディナイの背後にこっそり隠れていた、ディナイのシャツをだぼだぼのワンピースみたいに着ていたそいつ。 ディナイのベルトをぎゅっと掴んだまま、でかい目の片方を奴の背中から覗かせて、小さな声を。 「こ……こんにちは……ぼく、ルゥナ……です」 ルゥナは俺のことを怖がっているように見えた。 まぁ、隻眼だし、開いている方の目はきつい眼差しだし、無口で粗暴っぽいし。 なんといっても優男のディナイによしよしされていたらこんな輩には拒否反応が出るのも当然だろう。 俺の動作一つ一つにびくびく獣耳を震わせるルゥナに悪い気がして、その日は早めにディナイ宅を後にした。 後日、用があってディナイ宅を訪れる際、俺は通りかかった草原に生える花を適当に一つ手折った。 白ペンキに塗られた扉と窓枠、薔薇の蔦が漆喰の壁に這う瀟洒な家の隅っこで丸まっていたルゥナに手渡す。 「ほら、お礼を言わなくちゃ、ルゥナ?」 「ぁ……りがとぉ……です」 獣耳がまたびくびくしている。 俺は用を済ませると前回と同様、さっさと友人宅を後にした。 爽快な青空、遥か頭上で白い雲がのんびり泳いでいる。 毎日手入れを欠かさない愛用の猟銃を背中に担ぎ、深い森を貫く一本道を歩いていたら。 「ま……まってぇ…………」 驚いて振り返るとこちらに向かって駆け足でやってくるルゥナの姿が。 ぱたぱたやってくるルゥナの元へ思わず自分も駆け寄った。 「……これ……あげます……」 湖で拾ってきたのだろう、ルゥナの掌にはきらきら虹色に光る古代魚の鱗があった。 翌日、森へ嵐がやってきた。 狩りもできず、今にも吹っ飛んでしまいそうなオンボロ木造小屋でクソ苦いコーヒーを飲んでいたら。 コンコン 木の枝がぶつかっているのだろうと、俺はその音を無視して、長椅子にだらしなく寝そべったままでいた。 コンコン、コンコン 「……」 念のためダガーを逆手にとると足音を忍ばせて隙間風のひどい扉へ向かう。 気配を探ろうとしたが、荒れ狂う雨風に邪魔をされ、扉の向こうに何がいるのか全く把握できない。 取っ手を掴んで身構えると一気に扉を開け放った。 「こ……こんにちは……」 そこにいたのはルゥナだった。 全身濡れそぼった、ぶるぶる震えている、小さな小さな生き物が頼りなさそうに立っていた。 「嵐でひとりじゃ……さみしいとおもいました……」 そう言って震えながらルゥナは俺に笑いかけた。

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