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桃色吐息らばーず/平凡×男の娘/しょたしょた

(すばる)君は家庭の事情というやつでボクのクラスにやってきた転校生だった。 テレビに出てもおかしくないくらい、かっこいい、どこにいたってダントツ目立ちそうなきらきら男子だった。 「ねぇ、体育館ってどこ?」 一番派手な男子グループや延々と話しかけてくる女子をスルーして、クラスの地味平凡代表みたいなボクに、きらきら昂君は話しかけてきた。 びっくりした。 意味がわかんなかった。 転校初日から昂君はボクと学校生活を一緒に過ごすようになった。 放課後もコンビニや図書館に寄り道しておしゃべりしている内に、ボクの驚きや戸惑いは自然と消えていった。 ただ昂君と一緒にいるのが楽しいと、そう、普通に感じるようになった。 「なにこのコ、潤太(じゅんた)のともだち!?」 家にまで遊びにくるようになった昂君を目の当たりにして、高校生のお姉ちゃんは鼻息を荒くするくらい興奮した。 かわいい、かっこいいと連発し、クラスメートに自慢するとスマホで撮影まで始めた。 「もぉ、やめてよ、お姉ちゃん」 「いいよ、潤太くん、別に」 「やったぁ! じゃあ動画も撮影しよっと」 ウチは共働きで家事は大体お姉ちゃんがしてくれる、すごくしっかりしてる、だけど時々ちょっと理解不能なところがあって。 「色白いし、肌すべすべー。ね、昂君、ちょっとメイクしてみよっか!」 さすがにびっくりしている昂君、文句を言うボクのことを綺麗に無視して、ぱんぱんに膨らんだポーチを持ってきたお姉ちゃんは。 マンガのページを捲る手をストップさせた昂君に本当にメイクを始めた。 それから二十分後、ボクの前には女子にしか見えない昂君が。 それからというもの、美容専門学校に進学するつもりのお姉ちゃんは昂君を練習台にして、雑誌やネットで仕入れたメイク術を試すようになって。 昂君は全然嫌がらないで練習台になってあげて。 暇になってつまらないはずなのに、ボクは、そんな時間を眺めているのがすごく楽しくて。 教室では女子に何かと構われている、あのかっこいい昂君がみるみるかわいくなっていくのにすごくどきどきした。 その上、お姉ちゃんの欲求はもっとエスカレートして。 「ちょっとさぁ、これ着てみよっか、昂君」 自分の服を昂君に着せるようになった。 金曜日の掃除時間、廊下で窓拭きしながらボクと昂君はいつものようにおしゃべりしていた。 「今日、お姉ちゃん、いないんだ」 「え、そうなの?」 「なんかずっと狙ってたクラスの男子とカラオケ行くって」 「よかったね」 「だから晩ご飯代もらった」 「ふーん……」 「昂君、ウチ来る? コンビニで好きなもの買って、いっしょ食べる?」 「……うん、行く」 その日の放課後。 近所のコンビニでおにぎりとポテトチップスとからあげを買って、ボクと昴君はウチに帰った。 なんか楽しい。 お姉ちゃんいないし、二人きりって久し振りだし、明日休みだし。 昴君もおんなじ気持ちだったら嬉しいなぁ。 「ねぇ、潤太君」 「なに?」 「ぼく、やっぱりおにぎりツナマヨがいい」 「あ……エビマヨしか買わなかったよね」 「ツナマヨ買ってきてくれる?」 ボクはちょっとびっくりした。 一緒に行かないんだと、意外だった。 でもまぁ、そんなに気にすることでもないから、ウチに昂君だけ残して近所のコンビニに買いにいった。 戻ってきたら。 「おかえり、潤太君」 女の子になった昂君が出迎えてくれた。

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