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続・raspberryな恋人-2
よからぬリアクションに至らぬよう藤耶は唇を噛んだ。
智弘とは反対側の隣に座る友人およびその友人達は向かい側の女子二人と盛り上がっていて、テーブル下の破廉恥行為に全く気づいていない。
甘いカクテル片手に智弘と話をする女子二人も然り。
「盛り下がっちゃうから無視しちゃっていいよ~」
ぐにぐにずりずり、悪戯に片手を動かしながら、智弘はこの席で注文したビールをぐびぐび飲んでいる。
……勘弁してください、升野さん。
……怒るのはわかるけど、これはあんまりです。
するとそこへ救世主イコール智弘の本来の連れが現れた。
「え、ちょ、升野、お前何やってんの?」
彼の会社の同僚だった。
「女子大生と合コンなう!!」
「ばか、戻るぞ、なんかすみません、迷惑かけちゃって」
「え~まだ日常英会話、いっこも教えてもらってないよぉ~」
同僚はへこへこしながら自分たちのテーブルへ智弘を引き摺っていった。
だからといって藤耶の危機が回避されたわけではない。
……升野さんのせいで勃起なう。
「……ちょっと、トイレ、行ってきます」
トイレは男女別の個室が向かい合って設置されていた。
前屈み気味の藤耶は暖簾を潜ると空いていた個室に入ろうとして。
いきなり、どんっ、後ろから強く背中を押された。
「おばけだぞ~!!」
洒落にならない脅かしに心臓をばくばくさせて、藤耶は、肩越しにへらへら笑う智弘を見る。
すでに彼自身も個室に入っていて、後ろ手で、かちゃりとドアをロックした。
「升野さん、ごめんなさい」
「やーだ、許さないもーん!」
「でもあれはちょっと……あんなとこで……誰かに見られでもしたら」
「でもコーフンしたでしょ?」
すっかり酔っている智弘、ぴたり、藤耶にくっついてきた。
また懲りずに股間へ手を這わせてくる。
「ほーら、やっぱり! あっくんびんびん!」
「……」
「ここでヌこうとしたの? えっちぃ!」
「……このままでいるわけにもいかないし」
「じゃあ俺がヌいてあげよっか?」
「え」
コンコンコン
「ちょ、しょ、ぉのさん……人が……っ」
「んむ……っふぁーい、今あっくんが吐いてるので、もうちょっとおまひくらはぁい」
「うわ、くわえたまま喋らないで……」
アルコールで程よく温まった口内、喉奥まで迎えられ、熱い舌で一心不乱に可愛がられて。
「う……っ」
壁に寄りかかっていた藤耶はびくりと喉を反らした。
跪いていた智弘はとりあえず吐き出された飛沫を口に含むと。
びくびくする藤耶が出し切るのを待って、ふらりと立ち上がり、あーんしてみせた。
「ほら、ほんなにれたよ~」
「……早くぺっしてうがいしてください」
藤耶に言われた通り、智弘は子供のように洗面台でぺっしてがらがらうがいをした。
ノックはまだ続いており、一先ず落ち着いた藤耶は服を正すと智弘を連れ立ってトイレを出ようとした。
不意に智弘が呟いた。
「あっくんがお持ち帰りしていいのは俺だけだからね」
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