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トモ活しちゃう?-4

「え」 ま・ま・か・つ? 「まさか同じ学校の奴に現場見られるなんてツイてない」 「ままかつ……」 「ほしいカメラあるんだよ。学校の備品じゃない、自分のカメラ。そのための手っ取り早い資金調達手段として、だ」 ママ活。 樫井がママ活。 「バイトで長時間無駄にして低賃金もらうより、短時間で効率よく稼いだ方が割に合うだろ」 ラブホにいたってことは。 ドライブとか、食事とか、おきれい健全なものじゃなくて。 かんっぜん、ソッチ込みの、不健全な援助交際……。 「一緒にいた女は何か言ってたか」 樫井に問われた凛空は素直に答えた。 「服とかバッグとかブランドものだって。ママ活とか、別に、年上のカノジョだってしか」 「あの後、宥めるのに時間食ったんだぞ、お前のせいで資金源なくすところだった」 「ごめ……」 じゃあ、あの人、誰かの奥さんだったんだ。 人妻だったんだ。 樫井、人妻とえっちなことしてお金もらったんだ。 「な、何回目?」 「は?」 「樫井、ママ活、何回やったの?」 薄闇と冷気に満ちた教室。 「この間の金曜で三回目」 「……」 「ちなみに三回とも別々の女」 「……」 樫井の答えを聞く度に寒くなるどころか増していく熱に、凛空は、混乱する。 人妻なんていうパワーワードが追加されて一段と生々しさを帯びて。 いけないと思っても、樫井を目の前にして、よからぬ妄想が独りでに暴走して。 「軽蔑するのはお前の勝手だけど説教とか勘弁しろよ」 脳内を一気に占めた露骨な妄想の数々に打ちのめされて軽蔑・説教する余裕なんて凛空にはこれっぽっちもなかった。 樫井、えろい。 えろすぎ。 三回も、別々の人妻とか、なにそれ、おんなじ高校生のくせ、えろいにも程がある、こんなの、ただのえろじゃおさまらない、えろえろだ、えろえろ樫井だ、これ。 「お前って教師に告げ口するイイコちゃんタイプ?」 樫井が一歩迫り、凛空は咄嗟に一歩退いた。 「ネットに垂れ流す陰険タイプか?」 また一歩迫ってきたので、一歩退こうとしたら、誰かの机イスにぶつかった。 「これ以上俺に迷惑かけたりしないよな?」 樫井はさらに一歩凛空に迫った。 数センチの距離で、間近に見下ろされて、凛空は乾いた目をぼんやり見上げた。 「返事しろ、幸村」 あ。 樫井って八重歯だ。 無駄にえろい……。 「……俺ともママ活して……」

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