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トモ活しちゃう?-5

「は?」 樫井にぶっきらぼうに聞き返された凛空は……ぶわぁっと顔面まっかになった。 「な、なんでもない」 「お前相手にママ活?」 「っ、そんなこと言ってない! 誰にも言わない! ネットにも流さない!」 「へぇ、今まで気づかなかったな、お前って単調な結婚生活に干乾びそうになってる人妻だったわけか」 「うわぁぁぁぁ」 キャメル色のカーディガンにブレザー、マフラーをぐるぐる巻きしていた凛空の頬がみるみる熱せられていく。 「いくらくれんだよ」 腰が引けて机に座り気味のところを、逃げ場を塞ぐように、樫井の両腕が両サイドに伸びてきた。 前髪のかかる乾いた目と同じ高さで視線が重なって益々混乱する。 心臓が痛いくらい飛び跳ねて口から出るんじゃないかと思った。 「ひゃ、百円」 心臓をボロリする代わりに咄嗟に低価格を提示すれば樫井は……笑った。 「やっす」 わ、笑った。 樫井が笑った。 樫井って、八重歯で、そんな風に笑うんだ……。 初めて目の当たりにした無愛想男子の笑みに凛空は釘づけになった。 狭まってくる距離を何ら疑問に思うでもなく。 でも、唇と唇が重なり合って。 樫井の温もりが直に伝わってきて。 視界いっぱいに写り込んだ彼の瞼を眺めている内に、やっと、クラスメートの男とキスしていることに気づかされた。 え。 え、え、え。 えぇぇぇぇぇえ? 「っ……かし、い」 思わず呼号しようと口を開けば、ぬるり、躊躇なく滑り込んできた舌先。 凛空はビクリと背筋を震わせた。 上顎の粘膜をゆっくり舐め上げられる。 口内に溜まっていた微熱をじっくり掻き回される。 硬直していた舌を絡め取られて。 尖らされた樫井の舌先が、ぬるぬる、器用に纏わりついてきて。 溢れてきた唾液まで絡ませて、ぴちゃ、ぴちゃ、わざとらしいくらいの水音を立てた。 「ふ、ぅ……っ」 どうしていきなりこんなこと。 なんで男の樫井とキスしなきゃいけないんだ。 真っ当な疑問はこれまでに経験のない濃厚キスをかまされて浮かぶ暇もなかった。 「う……っ……ぷ」 仕舞いには片方の親指を口腔に突き立てられ、斜めからかぶりつかれるみたいに奪われた。 唇同士の隙間から唾液がだらしなく滴り落ちていく。 さらに奥まで、ぬるぬる、ぴちゃぴちゃされて、涙目になった凛空は力なく呻吟するしかなかった。 「んっ……ぅっ……ぅっ……っ……ぷは、ぁ……」 五分近く及んだキスが終わった。 上下の唇どころか下顎まで濡らして、ふやけた眼差しでいる凛空に、樫井は言う。 「口止め料としてサービスしてやる」 なんだよぉ、今の……。 すごく、すっごく……すっごいちゅーだった……。 あんなちゅー、人妻としちゃってるの、樫井……。 「勃ってる」 ふやけていた凛空の目が何度もパチパチされた。 「お前の、勃起してる」 先程よりも濃くなった暗がりに淡く光る乾いた目から、自分の股間に恐る恐る視線を移し、凛空は……絶句した。 明らかに盛り上がっている制服ズボンのフロント。 慌てて片手で隠して可能な限り樫井から顔を背けた。 「か、帰る」 「勃起させたまま帰るとか変質者かよ」 「っ……退いてよ、樫井……別に、俺、誰にも言わないから……もう帰らせて」 「お前が勝手に俺のこと待ってたんだろ」 「んっむっ」 キス直後でびっしょり濡れていた唇をぞんざいに拭われて凛空はぎゅっと目を閉じた。 勃起しちゃっている股間を押さえる自分の手に、樫井の手が触れると、頭も体もゾクリさせた。 「か、樫井」 「処理してやろうか」 「っ……なんで、そんな喋るの、いつもは何も言わないのに、ママ活してるとき、喋るの、ほ、褒めたり、優しくしたりするの」 「トイレ行くか」 「っ、っ、さわっちゃ、だめ、樫井、俺、」 「お前相手にママ活とか根本的に違うよな、トモ活か? 友達でもないけど」 「あっ、も、揉まないで、チンコ揉むのだめ……っ」 お互い長身同士、狭い机の上でジタバタする凛空に樫井は平然とのしかかった。 「別れた女の代わりに有料で慰めてやるよ」 あ。 樫井、聞いてたんだ……。

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