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同罪のすゝめ-4

「このままだと汚れるな」 恭彦はミチルの体の向きをぐるりと変えた。 背中抱きにし、床に転がっていたティッシュケースを足で引き寄せ、何枚か抜き取る。 「このまま俺がいかせていいんだな、ミチル」 「……うん」 「わかった」 何の抵抗もなく身を預けてきたミチルの首筋に顔を埋めて恭彦は未発達な熱源に愛撫を再開した。 「ぁ……ん……あん……」 恥ずかしがるでもないミチルは素直に嬌声を零す。 もどかしげに何度も身をくねらせては衣擦れの音を立て、過敏に震え、足を開いたり閉じたり。 少しピストンの速度を速めると、ぽろぽろ涙まで流して途切れがちに呟いた。 「も……っなんか、くる……っ……恭兄ちゃぁ……ん」 泣き声じみた呼び声に恭彦の体まで発情に蝕まれる。 柔らかな肌に口づけ、ねっとり濡れた先端を搾るように擦り上げる。 まだ皮に包まれた括れの辺りをもぞもぞ刺激しつつ、露出し立ての肉芯を優しく攻めた。 「あ……っきちゃ……きちゃぅ……っんーーーー……っっ」 恭彦の腕の中でミチルは射精した。 正確に言うならば、精通、した。 「だって、お前、その担任と」 「せっくすはしたよ、でもずっと苦しくて」 恭彦の腕の中でぐったりしながらもミチルは内腿に飛び散っていた白濁雫を指に掬い、まじまじと至近距離で見つめた。 「これが精子……?」 「そうだな」 腕の中でもぞもぞ向きを変え、ミチルは、紅潮して汗ばむ顔を恭彦に向けた。 「せっくす……恭兄ちゃんとしたい」 丸まって、ぎゅうっと、しがみついてくる。 それまで体中に漲る熱を持て余していた恭彦は何の抵抗もなく身を任せてくるミチルにぽつりと答えた。 「しようか、セックス」 カーテンを閉めて電気を点ける間も惜しみ、二階の部屋、恭彦はミチルと繋がった。 「先生がいっぱい舐めてくれたから挿入(はい)ったけど……」 「いちいち言わなくていい、ミチル」 かつてない興奮に射抜かれて硬く屹立したペニスを、ゆっくりゆっくり、ミチルに沈めていく。 抉じ開けた肉孔に熱棒を捻じ込んでいく。 「……痛いだろ」 クッションに頭を預けてブルブル震える、ぎゅっと眉根を寄せたミチルに、同じく眉間に縦皺を刻んだ恭彦は問いかけた。 「でも、ごめんな、止めらんない」 噛み千切られてしまいそうなキツイ締めつけであるのと同時に。 溺れてしまいそうなくらい罪深い快感。 ペニスが滾っている。 シャツ一枚になって、その身に自分を深々と咥え込んで震えるミチルに、見惚れてしまう。 「……動くから」 制服を着たまま恭彦は動き出した。 そっと、優しくしたい気持ちと。 欲望のままに激しく何度も貫きたい、そんな衝動の間で板挟みになって葛藤しながら。 自分が動く度に真下で仰け反るミチルを見つめながら。 「どこ、か……気持ちいいとこ、あるか」 体の奥底をゆるゆる突かれて掠れた悲鳴を喉奥に滲ませていたミチルは、震える唇で、答えた。 「手……ぇ……」 「……手?」 「……きもちいい」 シーツ上で恭彦の指に絡め取られていた指たち。 今までと同じように、ミチルは、きゅっと握り返した。 「織野君なら今一緒にいます」 帰り支度を済ませて消灯した実験室から出ようとしていたら携帯に電話をかけてきた生徒の保護者に芹澤は平然と虚言を述べた。 「ええ、大丈夫ですよ、ご心配なさらずに。ええ。大丈夫ですから。どうぞ落ち着かれて下さい。話を聞き終えてから帰宅させますので」 我が子を心配する母親をやんわり宥めて芹澤は電話を切った。 『恭兄ちゃん』 実験テーブルの上でかけがえのない生徒がポツリと呼号した名前。 未発達で華奢な体に対する狂おしいくらいの征服欲を激しく迸らせた、粗相。 「君が誰に惹かれていようと僕は君のことを愛してるよ、織野君」 実験室に沈殿した虚ろな暗がりに芹澤はそう囁きかけた。 『ねこ、天国いく?』 『さぁ』 『お花に生まれ変わる?』 『おれにはわかんないよ、ほら帰るぞ、ミチル』 『うん』 『帰ったらちゃんと手ぇ洗えよ』 『うん』 「あのときのネコ、今頃、天国にいるかな?」 恭彦はミチルをぎゅっと抱きしめた。 一度手離した彼をもう二度と離さないよう。 「花に生まれ変わったかもな」 end

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