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SATURDAY,JUNE ☓☓ at ☓☓ PARK-9

「……」 「おい、マキちゃん、聞こえたよな? へーんーじ」 「まだ心の準備が」 「……あ、そ。ビビッてるわけか、ビビリちゃん」 「そりゃあビビるに決まってるだろ、ちゃんと允のこと気持ちよくしてあげられるか不安だよ」 「……」 心臓を擽られたような心地になった允は。 また槇哉にキスをした。 大好物を堪能するようにじっくり、ゆっくり、気が済むまで好きなだけ独り占めした。 「……俺の口、食べられそう」 五分後に唇を解放してやればそんなことを洩らした槇哉に小さく笑う。 「マキちゃんに飢えてたからな」 「飢え……」 「俺、シャワー浴びてくる」 たった一秒でも離れ難いものの、允はベッドから立ち上がった。 「しよ、セックス」 「允」 「不安なんか感じる必要ないからな、マキちゃん」 マットレスに肘を突いて上半身を起こしかけていた槇哉にそう言い残し、部屋を出、浴室へ向かう。 本日、両親の帰宅は夜遅い。 現在時刻は四時前、自然光で十分明るいバスルームで水にほぼ近いシャワーを顔面から浴びた。 「……やばい……」 マキちゃん、めちゃくちゃかっこいい。 いつもの何倍もかっこいい。 不安に思ってることすんなり口にできるの、逆にスマート過ぎてやばいだろ。 しかも俺のことを心配した上での不安って。 「……はぁーーーー……」 真上からシャワーを浴びながら壁に片手を突き、允は、やたら長いため息をついた。 今日、できるだろうか。 色々予習したいって、マキちゃん、次回に持ち越そうとしてくるかもしれない。 俺はできれば今日してしまいたい。 キスする宣言されて一日待機するだけでもしんどかった、寝れなかった、ずっとそのことばっか考えて頭から離れなかった、から。 むりにとは言わないけれど。 允はバスルームで五分くらい過ごして脱衣所へ移った。 収納ワゴンの上段から取り出したバスタオルで全身をざっと拭き、一先ずボクサーパンツを履いて、そろそろカットしようかと思っている黒髪を大雑把にタオルドライしていたら。 「允」 ノックと共に呼号されて全動作をピタリと停止させた。 「ごめん、何か居ても立ってもいられなくて、来た」 すりガラスのはめ込まれたドアの向こうで槇哉が口にした言葉に、允は、再び鼓動を加速させた。 「開けてもいいか?」 問いかけておきながら、雑然とした脱衣所で棒立ちになっている允の答えを聞く前に、槇哉はドアを開いた。 「允のこと上で待ってたら我慢できなくなって」 ドアを開けて入ってくるなり槇哉は允を正面から抱き締めた。 まだ水気の残る湿り渡った肌身に絡みついた両腕。 冷水に近いシャワーを浴びて冷えていた皮膚に幼馴染みの熱がじわりと沁みた。 「……俺もシャワー浴びていい?」 首筋に触れた問いかけに背筋をゾクリと震わせ、直に注がれる熱にもう喘ぎそうになって、ほんの一瞬だけ允は唇をきつく結んだ。 「浴びなくていい」 濡れた髪を弄っている槇哉を雫滴る前髪越しに見つめた。 「このまま、ここで」 「え」 「九時まで親どっちも帰ってこない」 「でも」 「我慢できないくせ」 睨むように笑いかけ、胸倉を掴んで引き寄せた。 「マキちゃんに不毛な我慢なんかさせないよ」 ほんとうに手に入る。 ずっと求めていた幼馴染みが。 「俺としたいんだろ?」 「したい」 「ッ……マキちゃん……」 「允とセックスしたい」 槇哉はさらに允を抱き寄せて半開きだった唇をあからさまに奪った。 「ん……ッ……ッ」 あ、すごい。 このキス、今日イチ激しいやつ……。 允も槇哉の頭に両腕を回し、もっと唇を開き、欲してやまない舌先を奥まで迎え入れた。 「ふ……ぁ……っ……んっ……ン……」 微熱の糸を引かせて捏ね合い、下顎まで唾液を滴らせ、普段のスマートな物腰からは想像できない暴力的ですらあるキスに瞬く間に下肢を火照らせた。 「ッ……!!」 允は目を見張らせた。 腰から下をなぞった槇哉の掌に過敏に背中を反らした。 ボクサーパンツ越しに控え目な尻丘を両手に包み込まれると、堪らず、俯いた。 意味深な指遣いで狭間を撫でられ、中指の腹が後孔に引っ掛かると、甘い戦慄に心臓を鷲掴みにされた。 「ここに……いれるんだよな?」 キスを途中放棄し、自分より三センチ高い、自分と同じく平均体型である槇哉にしがみついた允はコクコク頷いた。 「大丈夫なのか?」 「ん……大丈夫……」 「でも、允、震えてないか」 「それ、は……マキちゃんと、やっと、こーいうことできるって……あれ……武者震いってやつ」 カリ、カリ、入り口を浅く優しく引っ掻かれた。 「あ」 些細な愛撫にブルブルする允に槇哉はスリ、と頬擦りする。 「允」 何だ、この声、どんだけ甘いんだよ。 もう駄目だ、俺がむり、我慢できない。 このままマキちゃんに貫かれたい。

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