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SATURDAY,JUNE ☓☓ at ☓☓ PARK-15

薄明るい浴室に乾いた音が規則的に響く。 バスタブの水面が激しく揺らいで非日常的な空間に飛沫が舞った。 「あ、あ、こんな、の、っ、やば、いっ、あっ、あっ、あっ」 先週の日曜日、允に問われた際は回答を渋った槇哉だが。 好奇心旺盛な十代男子よろしく、一応、一通り経験済みだった。 もちろんあるべきマナーはちゃんと守って、だ。 「はっ、はぁっ、ぁっぁっぁっ、っ、あ、んっ」 允の背中ってこんな感じなのか……。 小学校低学年の頃は一緒にお風呂に入ったり、中学の修学旅行でも大浴場で多くの同級生と共に入浴したりしたが。 こうして隅から隅までじっくり目の当たりにするのは初めてだった。 「あ……っ……?」 上体を倒し、バスタブ縁に全力で縋りついていた允の背中に顔を寄せ、背筋の溝にキスをした。 そのまま背骨に沿って、うなじまで。 柔らかな首筋をおもむろに甘噛みし、耳朶にも噛みついた。 允は腹底どころか脳天まで際どい恍惚に貫かれた。 律動は失速したものの、緩やかに突かれながら誰しも弱いところを繰り返し優しく嬲られて、内腿がガクガク震え出した。 仕舞いには脇腹から滑り込んできた手にペニスまで刺激された。 水面ギリギリのところで腹部につきそうなくらい反り返っていた熱源に指が触れ、絡まり、しごかれた。 「ひ……ッッ」 「允……射精()して」 熱と冷たさの入り交じる肌身を咀嚼しながら槇哉は允に強請る。 首筋に強めに口づけし、やたら潤う先端をしごき立てれば、真下に位置する体は最期の一瞬さながらに過剰に跳ねた。 「い……ッ……ッ……ッ……!!」 全身をしどけなく突っ張らせ、允は、絶頂へ至った。 無慈悲なまでの猛烈な締めつけに槇哉はぐっと耐える。 腹底で深呼吸し、射精欲を懸命に抑え込み、凄まじく増した肉圧を寸でのところでやり過ごした。 「は、ぁッッ……ン……マキ、ちゃ、ん……あ……はぁッ……」 バスタブ縁に額を押し当てた允は幼馴染みを切なげに呼号した。 あんまりにも愚直な彼が可愛くて、槇哉は、吐精したばかりのペニスを掌で擦り上げた。 「やっっっ……調子乗んな、ぁ……ぅぅっ……今、コスんないで……だめ……」 怖いくらいの快感に身を竦めた允は紅潮する肩越しに槇哉を睨め上げる。 「マキちゃん……いってねぇ……」 「うん、まだ時間あるし」 「お前なぁ……余裕ぶんな……」 「時間ギリギリまで允のこと放したくない」 「……むっつり……」 満更でもなさそうな表情になって中傷してきた允に槇哉も「允のむっつり」と言い返した。 「あ、マキちゃ、ん……」 再び身の内からズルリと引き抜かれていった、硬度を保ったままの、隆々と膨れ上がったペニス。 何とも言えない感覚に腰を粟立たせ、息を切らした允に、槇哉は「ベッド行こう」と誘いかけた。 バスタブ縁に両腕を引っ掛けて呼吸を整えていた允は。 「……ッ……允」 槇哉の双球から頂きにかけて一撫でした。 槇哉が思わず腰を波打たせれば「ヤラシ」と意地悪に笑った。 「そこ座れよ」 誘いを無視され、体を押しやられてバスタブ縁に座らされ、槇哉は角に背中をぶつけた。 膝立ちになって密着してきた允は迷うことなく槇哉の乳首を啄んだ。 「それ、は……ちょっと……くすぐったい」 「くすぐったい、イコール、感じてる証拠」 「ん……」 自然な色味をした突起に執拗に絡みついてきた舌。 尖らされた舌端に満遍なく舐め回され、唾液をすり込まれ、啜り上げられた。 「マキちゃんの乳首、きれいな色してる……」 あっという間に濡れそぼった乳首を爪弾かれた。 「ッ……くすぐったいって」 「食べちゃいてぇ」 「あ、おい……」 胸元に大胆にかぶりついてきたかと思うと勢いよく吸い上げられて槇哉は眉根を寄せた。 つい先程まで允のなかにいたペニスが痛いくらい跳ね上がる。 射精を先延ばしにされ、熱を溜め込んで、青筋をくっきり走らせて。 不意に允の手に包み込まれた。 指の輪で括れを擦り立てられた。 「ちょ……」 「マキちゃんの乳首たってきた」 「……允がそんなことするから」 「コッチも、ぱんっぱん。もういっそのこと、このまま射精()せよ」 「……」 「一発で回復させてやるから、さ」 髪を掻き上げた允はそう言ってしゃがみ込み、本能がはち切れそうになっていた熱源に唇を寄せた。 「ん……っ」 些細な接触にさえ悦んで武者震いしたソレに愉悦して。 喉奥で嗚咽を滲ませて苦しそうにしている槇哉を上目遣いに見つめながら唇の内側へ招き入れていった。 「ッ……ほんとう、もう……今、そんなことされたら……」 「ん、いーよ……俺の口でいけよ?」 「……そんなことしたくない」 「バーーーーーーーカ」 「……」 大好きな幼馴染みのペニスに裏側からしゃぶりつき、硬さや熱さ、舌触りに夢中になりつつ允は槇哉を堂々と貶した。 「だって、お前、俺に射精()してくんないから」 「そういうのは……嫌だ」 「俺はマキちゃんの絶頂を生身でフルに感じたい」 俺んなかに深く刻みつけたい。 「あ」 根元付近をしごかれながら積極的な舌先に頂きを愛撫されて槇哉は仰け反った。 「もう……ほんと……」 「いいよ、いって、このまま射精せ」 「みつ、る……ッ……」 ペニスを咥え込み、頭を上下させる允に、槇哉は咄嗟に手を伸ばした。 冷たい黒髪に五指を差し込ませる。 自分の熱源を口内に閉じ込めて上目遣いに見つめ続けてくる允と視線を重ねた。 「はぁ……ッ……ッ……!」 允の唇奥で射精した。 あたたかな粘膜にすっぽり包み込まれ、腰が砕けそうになる恍惚の中で、一思いに果てた。 反射的に指に絡ませた黒髪を引っ張った。 頭皮に生じた僅かな痛みに允もまた危うい恍惚を覚えた。 雄々しく痙攣し、口内で絶頂を迎えた幼馴染みにどうしようもなく欲情した。 「はぁッ……は……ッ……ッ……」 水風呂からザバリと身を起こした允にめちゃくちゃなキスをされて槇哉は……びっくりした。 「ッ……お前な……」 「はは……自分の味、初めて知った……?」 「……知りたくなかった」 「半分はゴックンしたんだよ、でもな、マキちゃんすげーいっぱい射精すから……お裾分け」 「こんな嬉しくないお裾分け、初めてだ」 掻き上げていた前髪が再び目許に降り、長い睫毛を満遍なく湿らせた允を、槇哉は抱きしめた。 「おかわり」 槇哉のおねだりに允は幸せそうに笑った。 バスルームの隅っこで、居心地のいい幼馴染みの腕の中で、成就された初恋の幸福感に滅多打ちにされた。 六月☓☓日の土曜日、☓☓パークであったライブ、あの日の夜に俺達は……。 雨上がり、瑞々しい夕空の下、槇哉と允は並んで歩いて帰った。 「この空、先週のライブんときと似た色してる」 自分のキャップをかぶった允が空を仰ぎ見、槇哉も遥か頭上を見上げた。 「あのライブ、一生忘れないと思う」 「俺も、マキちゃん」 死ぬまで忘れたくない思い出を密かに共有する幼馴染み同士は見つめ合って笑った。 end

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