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いぢめさせて平凡くん?-3

口を塞がれて足を開かされて破廉恥な股間をじっくり視姦されて。 散々な状況に晴樹はとうとう悔し涙をポロリさせた。 「晴樹、泣いてるの?」 口を塞がれたまま、しかめっ面で素直にコクンと頷けば、深みを増した伍藤の黒笑顔。 「可愛い」 あのー、最早それ悪口だよね、伍藤くん? ていうか、いい加減伍藤くんの伍藤くんをおれにもう当てないでくれる? しかし晴樹の願いも空しく伍藤の行動はやらしくエスカレートする。 制服越しに当てるだけだったのが、押しつけて、ゆっくり腰を動かして摩擦するまでに及んだ。 何とも言えない感覚に晴樹は怯えまくる。 貧弱な太腿を粟立たせ、ネイビーの靴下とローファーに包まれた両足を空中でブルブル震わせた。 こ、怖い。 どうしよう。 ほんと、ど、ど、どうしよーーーーーーー!!!! 「ハレル!!!!」 いきなり大声で呼ばれて。 晴樹は息が止まるかと思った。 「いつまで待たせるつもりかなー、ダチ帰ったし、もう六時なるし」 西條だ。 教室で待ち草臥れて帰るどころか、わざわざトイレまで様子を見にきたらしい。 「おーい、聞こえますかー、ハレルの分際でシカトですかー」 くそむかヤンキーこと西條がトイレへやってきて伍藤の一重目は冷ややかな視線を紡いだ。 何とも言えない股間摩擦が止まって晴樹は一先ずほっとする。 伍藤くんのこと変態だって怯える日が来るなんて……。 「返事ないならドア蹴破りまーす」 こんなにも西條くんのこと頼もしく感じる日が来るなんて……! 「西條くんっっ」 「はー。ハレル返事も着換えもおっそ、小学生以下の幼稚園児みたーい、もしかして一人でぱんつ履けないとか?」 「そう。だから俺が手伝ってあげてる」 一瞬、薄暗い男子トイレがシーーーーーンと静まり返った。 「伍藤」 洋式トイレ上であわあわしている晴樹を余所に、やたら低い声で自分の名を口にした西條に伍藤はドア越しに愉快そうに話しかける。 「今、晴樹とえっちなことしてる最中」 「っ、えぇぇぇえ? ち、ちが、違うけどっ!?」 「そう? だって、こんなことしてるのに?」 いきなりグリ、と強めに股間に股間を押しつけられて、つい、晴樹は。 「あっっっ」 甲高い一声を上げてしまい、慌てて自分で自分の口を塞いだ。 次の瞬間。 個室のドアがものの見事に蹴破られた……ではなく。 「は? なにこれ? は?」 西條は隣個室に突入するや否や、洋式トイレにお行儀悪く素早く乗り上がり、仕切りの壁によじ上り、憤怒の眼差しシャワーを中にいた二人に浴びせてきた。 うっすら暗がりにキラキラ煌めく、定期的に美容室でカラーリングされているパツキン。 片耳にはクロスのモチーフがついたシルバーのチェーンピアス。 美白肌、小顔、適度に整った眉、くっきり二重のカラコン吊り目で目力上等。 中学時代からヤリ友ちゃんに困らない、小悪魔男子というより悪魔的男子なクラスメート。 「くそむかヤンキーは盗み見もお手の物?」 あんぐり口を開けている晴樹に反し、悠然と自分を見上げてくる伍藤に対し、西條はギラリと吊り目を光らせて。 「え」 「うわ、ぁ、ちょっと……!!」 あろうことか晴樹と伍藤の二人ですでにいっぱいいっぱいな個室へ……飛び込んできた。 接触して怪我しないよう咄嗟に伍藤に立たされた晴樹は目の前に着地した西條と向かい合う羽目に。 普通科目の成績はほとんどギリギリセーフながら体育だけは好成績、よってどこを打つでもなく、半袖シャツにネクタイを緩め、チェックのスラックスにスニーカー、足首にアンクレットをしているパツキンヤンキーは。 晴樹の真後ろに立つ伍藤を凄まじく険悪な形相で睨んだ。 「ハレルに何してんのかなゲス眼鏡」 いっっつもおれのことバカにしてイヤガラセしてくる西條くんが、おれのことを心配している! 「ぶちのめされてーの、この下半身クズのサイコ野郎」 「低能の割に悪口のボキャブラリーは豊富なんだ」 男子トイレの奥個室に男子高校生が三人、窮屈極まりない。 自分を挟んで対峙するクラスメート二人の不穏な雰囲気に晴樹は居た堪れずに縮こまった。 おれには二人のケンカを止める力量も度胸もない。 だから。 今の内にさり気なく逃げよう。 このカッコで教室まで行くのは心外だけど、みんな帰ったみたいだし、誰にも会わないよう祈るしかない、よ、よし……! 「じゃ、じゃあ、おれはこの辺で、後は二人でごゆっくり~、っ、あ、痛い! 腕痛い!」 さり気なく出て行くのは失敗に終わった。 西條に力任せに片腕を掴まれて晴樹の逃走は阻まれてしまった。 「サイコ眼鏡に何された」 激おこ西條に問われた晴樹は一段と縮こまった。 いつにもまして激おこオーラぷんぷんなヤンキー生徒に泣きべそをかきそうになった。 「う……」 「ッ……泣くほどのことされたのかよ」 「違うよ、今のお前に怯えてるだけ、晴樹は」 西條とメンチをきる度胸が皆無である晴樹は、彼が接近すると普段から視線を合わせないようにし、斜め下ばかり向いていた。 「い、痛い」 やっぱり「災い」だ、西條くん。 おれにはどうすることもできない。 「こ、こんなぱんつ履かせて……変態かっ……変態っ……西條くんの変態ヤンキー……っ」 だから、もう、好き勝手に文句を言わせてもらおう。 どうせ何とも思わないだろうから。 「もうおれに絡むなぁっ……体育のとき、いきなり高い高いすんなっ……おれの昼ごはん盗み食いするなっ……おれのボールペンも、消しゴムも、ハンカチもっ、いつまで借りてるつもりだっ……ぜんぶ返せ返せ返せ返せっっ」 お腹に溜まっていた不平不満を晴樹はぶちまけた。 やはりメンチは切れずに斜め下に向かって。 「お、おれのもの返せ……返して……返して、ください、ハイ」 情けない感じの語尾になった。 「ハレル」 俯く晴樹の肩がビクリと震える。 「そ、そのハレルって呼び方も……おれ、晴樹だし……」 ブン殴られるかも。 伍藤くん、止めてくれるかな。 いや、さっき急に得体の知れなくなった伍藤くんを頼るの、もうやめよう。 そうだよ、もう高校生なんだから、逃げてばかりいないで、言いたいことはハッキリ言って、自分で決めないと……!! 「めちゃくちゃ似合ってんのな」 晴樹は思わず目の前に立つ西條を見上げた。 伍藤より一センチ低い西條は、紐パン姿の平凡クラスメートをガン見していた。 えーーーーーーと? 「さ、さ、さ、西條くん……おおお、おれの話、聞いてた?」 「似合いすぎだろ」 おーーーーーーい? 上半身は平凡まっしぐら、校則に忠実な制服姿。 下半身はローファーに靴下に紐パンという破廉恥スタイル。 クセになりそうなアンバランスさ。 西條は伍藤への激昂も忘れた。 せっかくぶちまけた不平不満を華麗にスルーされて愕然としている晴樹を力任せに抱き寄せた。 「俺のモン」 え、どゆこと? おれの持ち物だけじゃ満足できなくて、おれ自身まで「俺のモン」ってこと? ……益々、意味、わかりません……。

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