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リバって愛して-2
「こ、怖かったよぉ」
「来週の花火大会ちゃんと空けとけよ、また間違って早寝すんなよ、三里」
「うん」
「三里っ、またお揃いの浴衣着て行こっ?」
「おい。下駄疲れたからって、また俺におんぶさせんじゃねーぞ?」
遊ぶ約束をして別れた四人。
夕暮れ時だった。
その三十分後。
「え」
阿南からファミレスに呼び出された三里は彼が口にした言葉に久方振りにびっくりした。
「阿南君、緒方君のことが好きなの?」
バスケットボールを片掌で軽々と掴むことができる大きな手に華奢なスプーンを携え、コーヒーパフェを淡々と食べつつ、阿南は頷いた。
「じゃあ、いつか告白するの?」
「迷ってる……お前と、佐藤と、緒方……この関係が壊れたら……それを考えたら怖いんだ」
中学から仲のいい大切な友達を見据えて三里は返事をした。
「阿南君だけが本心を閉じ込めて、この関係が続くのなら、私は、いっそ壊れた方がいい」
その頃、隣のファーストフード店では。
「え゛え゛え゛っ!?」
「声でけぇよ」
「緒方って、緒方って、ほもだったの? いつからほも!?」
「やっぱお前に言ったの間違いだったわ」
「ちょ、帰んな! んな中途半端な! ちゃんと聞かせてよー!」
窓際のカウンターで並んで座った緒方と佐藤。
「焦ったぁ、心臓バクバクしてる……いきなり呼び出されたから、てっきり、わたしに告ってくんのかと」
「それはねぇわ」
「いつから!? いつから阿南のこと好きなの!? いつ告んの!?」
「つーかさ」
「はい!?」
「阿南と三里って付き合ってるぽくねぇか」
「そそそそ、それは、なな、ないんじゃ、」
「お前のその反応がまずねぇよ」
映画館でシュシュをなくして新しいシュシュで髪を結んだ佐藤はテヘヘと笑う。
「どーかなー。もしそんなカンケーだったら一言くらい報告して……く、くれないかな?」
「あの二人、未だに読めねーからな」
「あ!」
「あ?」
急に素っ頓狂な声を上げた佐藤に緒方は首を傾げ、ガラスの向こう側にはファミレスを出て偶々通りかかった阿南と三里がいて、二人の視線はハンバーガーの具をぼたぼたこぼしている佐藤に向けられていて。
それから三十分後。
日は大分落ちて常夜灯が点り始めた暮れゆく時間帯。
「暑ぃな」
「……そうだな」
緒方と阿南は公園のベンチに並んで座っていた。
『うわあッわ、わたしどーしてもテリヤキ食べたくなって!?緒方に無理矢理付き合ってもらったんだよね~うへへっあっ!三里っ、浴衣見よっ?緒方と阿南、いっしょ帰りなよ、ほらほらっ、早くっ、早く帰れーーーー!!』
てんぱった佐藤のお節介で二人きりにされた。
余計な、とは思わない。
気心の知れた友達の計らいを緒方は有難く思う。
しかしその計らいをうまく使いこなせるかどうか。
「あ、二人でトイレ入ったカップル、もう出てきやがった」
「……へぇ」
「五分くらいか? 男、早漏なんじゃねーの」
「……そうだな」
暑くて全身がジリジリする。
もう西日は果てたのに。
「家帰んのめんどくせぇな」
ーーだせぇな、さっきから何言ってんだ、俺。
「……そうだな」
ーー……よく佐藤に抱きつかれてるが、緒方が佐藤に抱きつくことは……あるんだろうか。
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