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求愛フラストレーション-2
幸太のクラスには転校生がいた。
「……、……」
教室にいた生徒みんな、ごくりと息を呑んだ。
黒板の前に立った転校生男子。
チャコールグレーのセーター上にカーキ色のパーカーを羽織っている。
フードを目深にかぶっているが。
パツキン……のようだ。
担任が「中邑朔也 くん」と紹介していたから、外国人ではなさそうだ、パツキンに染めているのだろう。
フードのせいで、どんな顔をしているのかイマイチわからない。
小声の挨拶は最前列の生徒でも聞き取れなかった。
猫背で身長もわかりづらい。
色白で細身であるのはわかった。
「席はあそこね。ああ、後ろの仲山くん、中邑くんに学校のこと色々教えてあげてね」
お世話係にちゃっかり任命されてしまった幸太。
(ぱっと見、不良っぽい)
前の席に転校生の朔也がやってくる。
とりあえず笑顔を浮かべて出迎えた。
「はじめまして、どうもよろしく、朔也くん」
返事はなし。
フードの下からチラリと目線だけはもらえたようだが……。
(……朔也くん、人見知りの猫みたいだな……)
「幸太」
「遊びにきたよ」
講堂での始業式が済み、担任が戻ってくるのを教室で待機している間、隣のクラスから大和と真希生がやってきた。
「ひっ……イケメンコンビきた……っ」
「隣のクラス、うらやましすぎ」
「クラス替え、今すぐやり直してほしい」
多くの女子が色めき立っている。
確かに容姿端麗な二人が並んでいると、ぱっと場が華やぐ、人目を惹きつける。
単身でも、大和の場合はバスケの試合において観客席から黄色い声援が飛び交ったり。
真希生に至っては街中で盗撮被害に遭うこともしばしば、SNSで見知らぬアカウントに写真がUPされていることもあった。
「おー、大和、真希生ー」
幸太が加わると……さらに二人のイケメンっぷりが引き立つというか……凡庸 たる幸太のフツメンっぷりが際立つというか……。
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