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求愛フラストレーション-3

「私も仲山くんのポジションになりたい」 「そこ代われ、仲山」 一部の女子がギラつく中、幸太は幼馴染み二人を笑顔で出迎えた。 「俺、こっちのクラスがよかったな」 ネイビーのセーターを腕捲りした大和は幸太の真横にすっと立つ。 「うん、俺も。こっちのクラスになりたかった」 キャメル色のカーディガンが似合う真希生は幸太の机に浅く腰掛けた。 「なに、あのゾーン、楽園?」 「天国だ、天国」 話しかけたいが、イケメンパワーに気後れし、女子は遠巻きに彼らを見守る。 「ね、幸太。このコって転校生だよね?」 講堂では外されていたが、またフードをかぶって頬杖を突いている前席の朔也の存在に、真希生が触れた。 「あ、うん。中邑朔也くん」 「ふぅん。中邑くん、ね」 「あ」 朔也が振り返り、幸太はちょっと慌てた。 「朔也くんの悪口言ってたわけじゃないよ!?」 「後ろで自分の(はなし)されたら、当然、気になるよね」 あたふたしている幸太の肩に腕を回し、真希生は転校生に微笑みかける。 「俺はね、幸太の幼馴染みの小野塚真希生。そして彼は峯大和。同じく幼馴染みでバスケ部エース」 「別にエースってわけじゃない。中邑、何か興味ある運動部があるなら紹介する」 大和はベージュのセーターを着用している幸太の肩に大きな手を置いた。 「う゛~ッ、仲山、う゛らやましすぎッ」 「いやいや、二人からあんな同時接近されたら失神モンだって」 (さっきから全部聞こえてるんだよなー……たはは) 「あれっ」 朔也は何も言わずに席を立った。 そのまま俯きがちに……教室を出ていった。 「なにあれ、かんじわる」 「峯くんと小野塚くんのこと無視したよ、信じらんない」 「あの転校生、なんか怖くない?」 「前の学校で事件起こして転校してきたとかじゃ?」 (おいおーい、女子の皆さん、さすがにそれは飛躍しすぎなのでは?)

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