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求愛フラストレーション-4

「どうしたんだ?」 「何か気に障ったのかな」 大和と真希生は幸太に親しげに触れたまま、廊下へ去っていった朔也を見送っていた。 「二人とも、そろそろ教室戻んないと、先生来るよ?」 幸太に言われて隣の教室へ移動していった二人。 (怒ったんだろうか、朔也くん) ていうか、戻ってこないんですけど。 お世話係に任命された手前、放っておけないよな。 幸太は急ぎ足で教室を出た。 まだ生徒の行き来がある廊下を進み、朔也を探した。 「転校生だからって、その髪の色はないでしょ」 「目立ちたがりクンなのかなー?」 (げ!!) (朔也くん、三年に思いっきり絡まれてる!!) 階段の手前で上級生に絡まれている朔也を見つけ、幸太は大慌てで駆け寄った。 「すみません! 先生が呼んでるので連れていきまーす!」 適当に嘘をつき、朔也の腕を掴んで、その場から連れ出す。 (あー、怖かった) 「今の、三年の中でもヤンチャな人達なんだよな。前に大和と真希生にも文句言ってきたことがあって……」 朔也に乱暴に手を振り払われて幸太は目を見張らせた。 さっきの上級生に外されたのか、フードをかぶっていない、サラサラしたパツキン頭を曝して立ち止まった転校生に戸惑う。 (……朔也くんの地雷がどこにあるのか、わからない……) 「ごめん、余計なことしたかな」 「……」 「ほら、教室戻ろう」 「……」 「……どうかした?」 朔也は一向に動き出そうとしない。 お手上げな幸太は肩を竦め、一人で教室へ戻ろうとした。 「……、……」 「え? なに?」 「……れ……」 (声ちっさ!!) 「朔也くん、なんて? まさか具合悪いとか?」 猫背で顔を伏せがちな朔也を覗き込んでみれば。 長めの前髪越しに、切れ長な一重の双眸と出会って、幸太は微かに息を呑んだ。 (……すごくきれいな目だなぁ……) 「……もれそう……」 「え!?」  「……トイレ、どこ……」 「こっち! 男子トイレはこっちです!」 思わず敬語になって、実は迷子になっていた転校生をトイレへ案内してやるのだった。

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