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求愛フラストレーション-6
ふっと頭に過ぎった失礼な憶測をすぐさま打ち消し、幸太は朔也に声をかけた。
「朔也くん、もしかしてこの辺に住んでるの?」
「うんっ」
元気いっぱいに返事をしたのは女の子の方だった。
「お兄ちゃんと同じ学校の人ですよね、こんにちはっ」
(またまた失礼かもだけど、ぜんぜん似てない……)
「わたし、妹の小春です、小四です、第二公園前のおうちに引っ越してきました、お兄ちゃんのこと、どうぞよろしくお願いしますっ」
おれらと会ってもノーリアクションの朔也くんと違って、自己紹介の挨拶もバッチリ、しっかりした妹だぁ……。
それにしても!
朔也くんが抱っこしてる猫、かわいい!
「このネコはうちで飼ってるネコです、オスです、お兄ちゃんが雨の日に段ボール箱ごと拾ってきましたっ」
それって優しい不良のテンプレじゃないか……!
「黒いから<ひじき>って名前つけました、お兄ちゃんがっ」
「ひじき……っ」
あ、つい笑ってしまった。
「ひじき、寝てるのかな、大人しいね」
「ひじきはお兄ちゃんに抱っこされるのが好きなんですっ」
「ひじきにさわってもいい?」
「いいですよっ」
(朔也くん的にはどうなんだろ、嫌だったりしないかな?)
幸太と妹の会話を傍観していた朔也は。
心持ち屈んで、ひじきと幸太の距離を近づけた。
今はフードを外していて、青空の下、金色の髪が春風にサラサラと靡いている。
長い前髪の向こうに眦 の深く切れ込んだ双眸が見え隠れしていた。
(ほんとにきれいな目してるなぁ)
幸太はぼんやりと見つめながら手を伸ばした。
春の陽気も手伝って、ぼんやりする余り……黒い毛並みではなくパツキン頭をナデナデ、ナデナデ……。
「それ、ひじきじゃないです、お兄ちゃんですっ」
幸太は我に返った。
顔をさっと赤くし、あたふた謝ろうとした。
「幸太、そろそろ行こう」
「中邑くんも用事があるだろうし。ね?」
幼馴染み二人が両脇から出現したかと思うと、それぞれ幸太の腕をとり、朔也から引き離した。
「じゃあな、中邑」
「呼び止めてごめんね」
大和と真希生はそのまま引き摺るように幸太を自分たちの家の方へと連れていった。
「急にあんなことしてキレられたらどうするんだ」
「もうあんなことしたら駄目だよ、幸太」
両サイドから注意される中、幸太は肩越しに後方に目をやる。
元気いっぱいに手を振っている小春と、その隣で、黒猫の前脚をとって自分の代わりにバイバイさせている朔也の姿にほっとした。
「朔也くん、そんなすぐにキレたりしないよ。きっとイイコだと思う」
大和と真希生はチラリと視線を通わせる。
幼馴染み二人の意味深な視線のやりとりに気づかずに、幸太は、兄妹に笑顔で手を振り返した。
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