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求愛フラストレーション-7
「それ重そう、おれが半分持つよ」
「あっ……仲山くん、ありがと」
「雨で階段滑りやすいから気をつけて?」
「あ、うん……ありがと……」
「じゃあ、俺が君の分、持とうかな」
「ッ、ッ……お、小野塚くん……ッ……!?」
「こんな重たいの、華奢な女子に持たせるなんて、ひどい先生だね」
「ッ……ッ……ッ……!!」
(やれやれ、また女子一人信者にさせちゃってるよ)
教室とは別校舎にある社会科準備室へ備品を運び終わると。
「じゃあね」
幸太の肩に腕を回した真希生は、同じ帰り道だというのに女子にバイバイと手を振り、歩き出した。
(ルート同じなんだし、一緒に戻ってもいいのでは)
気になって振り返ってみれば、幸太のクラスメートである女子は特に気にする風でもない、真希生の後頭部をうっとりガン見しつつ後をついてきていた。
(気にする必要なかったか……?)
「ねぇ、幸太」
「うん?」
「休み時間、また知らないコから告白されたよ」
告白される度、真希生は幸太に逐一報告してくる。
「昼休みならまだしも休み時間って大胆だな。で、OKした?」
「してない」
「も~、なんでだよ~」
「だって全然知らないコだったから」
「これから知ってけばいいだろ~、なんだよも~」
残念がっている幸太に真希生はクスクス笑った。
「付き合うなら、やっぱりよく知ってるコがいいな」
「うーん、まーそうかなー?」
「幸太は? どんなコと付き合いたい?」
「おれのこと好きになってくれるなら贅沢言いません、でも髪はショートが似合うコがいいかなー」
「手繋ぎデートしたい?」
「あー、いいよなー」
「こんな風に」
真希生に手を握られて幸太は苦笑する。
「恋人繋ぎなら、こうかな」
指に指が絡んできて、不慣れな心地がくすぐったく、幸太は手を引っ込めた。
「どうして解くの?」
「くすぐったいんだよ」
「せっかく練習台になってあげたのに」
「どっちかっていうと、今のだと、おれが女子役になるんじゃ?」
「じゃあ、ちゃんと女子役に徹してあげる」
真希生が手を差し出してくる。
幸太は仕方なく幼馴染みの戯れに付き合ってやった。
「真希生の手って柔らかくてあったかいよな」
「幸太に褒められて嬉しい」
とりあえず自分から握って、照れくさくなり、すぐにまた引っ込めようとしたら。
「いて」
ちょっと力を込めて真希生に握り締められた。
「このまま教室戻ろう?」
(意味わからなさすぎ!)
いや、二年になってから、こういう意味不明なスキンシップが増えたような気がする。
来週で五月になるけど、この四月の間、やたら真希生にひっつかれているような。
(違うクラスになったから……か?)
「っ……うわ、後ろの女子が増えてる……?」
いつの間にやら背後をついてくる女子が数人ばかり増えていて、数多の恋心を引き寄せる真希生に幸太はこっそり脱帽した。
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