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求愛フラストレーション-8
昼休みになった。
「うわ、今日のお弁当もおいしそう」
「……」
「毎回、凝ってるよなー、朔也くんちのお弁当」
「……インスタにあげて……」
「ああ、お母さんインスタやってるんだっけ、それでかー」
幸太は自分の机を挟んで朔也と昼食をとっていた。
「小春ちゃん、元気してる?」
「……して……」
「ひじきも、元気?」
「……げん……」
(どうしても語尾が聞き取れない)
なんというか、朔也くんはダウナー系不良というか。
ふらりと授業をさぼる。
勝手に早退したりする。
集団行動は放棄しがち。
(おかげで未だにクラスに馴染んでいない)
お世話役の手前、なんか申し訳ないというか……。
「今度さ、ひじき見にいってもいい?」
ここはお宅訪問して、もっと親交を深めて、おれを入り口にしてクラスのみんなと意思疎通できるようになれば……!
「中邑にも都合があるだろ、幸太」
「それに服に毛がついたら、おばさん、アレルギーで咳が出るかもしれないよ?」
幸太の両隣の席には大和と真希生が座っていた。
最初は転校生の朔也を気にした幸太が彼と一緒にランチをとるようになり、すると二人もやってくるようになって、昼休みはこの顔触れが定番と化した。
「お母さん、確かに猫アレルギーだけど、そこまで過敏ってわけじゃあ……」
小さい頃から猫が好きで、野良猫を触ろうとしては引っ掻かれてきた幸太に大和・真希生は揃って首を左右に振った。
「……」
朔也は一切、会話に入ってこようとしない。
しかし、最初は前を向いたままご飯を食べていた、それでは意味がないと幸太にイスの向きを度々変えられて、今では自分から向かい合うようになった。
(もしかして、これって余計なお節介の極みだったり……?)
せっかく転校してきたんだし、いろんな人と仲良くなって、いろんなこと楽しんでほしいんだよなー。
「ねー、みんなチョコ好き?」
一人の女子がお菓子を携えて幸太たちに話しかけてきた。
「うっわ、さすが去年のミスコン二位、度胸ある~」
「みんな、じゃないっしょ、絶対に峯くん小野塚くん目当てっしょ」
教室にいた複数の女子グループがさり気なく注目している。
「チョコなら時々食べる」
最初に返答したのは大和だった。
「ほんとー? よかったー! みんなにいっこずつあげるねっ」
「俺はいいかな」
真希生にやんわり断られて彼女の笑顔はほんの一瞬だけ引き攣った。
「俺の分は幸太にあげてくれる?」
「あっ、じゃあ仲山くんにはニッコニコの二個あげるね」
「わ、わーい、ニッコニコの二個もらえた、わーい!」
幸太は大袈裟に喜んでみせ、個装されたチョコレートを二つもらった。
「はいっ、中邑くん」
「……、……」
「あ、朔也くん、ありがとうって言ってる」
「幸太は中邑の翻訳機みたいだな」
「あははぁ、峯くんの言う通りだねー、翻訳機だー」
女子が自分のグループの元へ去っていくと。
「やっぱり食べたくなった」
真希生は幸太に掌を広げ、おねだりした。
「幸太のチョコ、ちょうだい?」
「お前なー、最初からもらっとけばいいのに」
「ニッコニコもちょうだい?」
「一個だからニッコニコじゃないだろ!」
無邪気に笑ってチョコレートを受け取る。
「ありがとう、幸太」
「いや、お礼はおれじゃなくて朝倉さんにして」
「やばい、小野塚くんがチョコ食べてるの、尊い」
「拝んどこ」
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