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求愛フラストレーション-22

手持ちの鍵で部室のドアを開錠した大和に幸太は目を見張らせた。 「部室の鍵って、体育教官室に保管してるんじゃなかったっけ?」 「これはスペアだ」 「ふーん……でも持ち歩いていいんだっけ? うっかり返すの忘れてたとか?」 怪訝そうにしている幸太に大和は浅く頷く。 去年、うっかり持ち帰った風を装い、その際にスペアキーを作成したことは黙っておいた。 整理整頓されたバスケ部のロッカールーム。 「で? 大事な話って?」 (……大和、ドアをロックした) わざわざ部室棟まで移動して、鍵までかけて。 そんなに重要な話ってことか……? 「もしかして。二年になってから様子が変だったことの説明だったりする?」 幸太が問いかければ大和と真希生は意味深に視線を通わせ合った。 しかし、なかなか口を開こうとしない。 肝心の大事な話をしようとしない幼馴染み二人に幸太は途方に暮れた。 「な、本当にどうして今なんだよ? おれ、任された進行役を勝手に投げ出したんだぞ? クラスのみんな困ってるかもしれないのに……朔也くんだって同じシフトで迷惑かかって……っ」 幸太は……びっくりした。 突然、真希生に口を塞がれて奥二重の目を限界いっぱい見開かせた。 「今、その名前、言わないで」 女性じみた滑らかな片手で幼馴染みの口を覆った真希生は言う。 (やっぱり朔也くんのこと嫌いなんじゃないか!) 「もごごっ……もご……!」 「幸太、怒ってるの?」 (いきなりこんなことされたら誰だって怒るわ!) 「怒らないで?」 「もごーー!」 口と鼻を塞がれて息苦しく、幸太が呻けば、それはそれは優しげに真希生は微笑んだ。 (えぇぇえ? 今、笑うところじゃないだろ!?) 真希生、どーしちゃったんだ。 ちょっと怖いぞ……。 「ぷはっ……?」 ドレスシャツにチョッキというクラシカルな激むずコーデを恐ろしいまでに着こなした真希生に、幸太は、すっぽり抱きしめられた。 「好きだよ、幸太」 信者一同の鼓膜を蕩かしそうな甘い囁き。 「大好き」 「えーと……真希生? 大事な話はどこいった?」 「これが大事な話だよ、幸太」 「はい~~?」 全力で甘えてきた真希生に幸太はただただ途方に暮れる。 すぐ傍らで相変わらず静観している大和に、またも助けを求めた。 「なぁ、大和、真希生がふざけてる……なんとかして……おれ、こんなことのために進行係さぼったわけじゃない……」 助けを求められた大和は、ずらりと並ぶロッカーの前から移動した。 急に上機嫌になった真希生にぎゅうぎゅうされている幸太のそばへ、そして。 背中から幸太を抱きしめた。 「……はい~~……?」 幼馴染み二人による熱烈なサンドイッチハグ。 具材ならぬ真ん中の幸太は途方に暮れた、大いに暮れまくった……。

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