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求愛フラストレーション-26

「……幸太の血、ガチで吸うつもり」 無言で立ち尽くす幸太を背中から抱いた真希生に、朔也は、言う。 「そうだね。本当に吸血鬼だったら吸いたいかも」 真希生は微笑を浮かべて答えた。 でも目は笑っていない。 今に始まったことじゃない。 いつだってそうだった。 心から微笑むのは幸太の前でだけ、だった。 「幸太を返せ。それは俺達のセリフだ、中邑」 やたら距離を狭め、自信に満ちた態度で大和は朔也を見下ろした。 「転校してきたばかりのお前が俺達から幸太をくすねていったんだろう?」 試合でだって悪質なファウルはとらない、フェアプレーの精神を見事に体現している大和は、朔也のフードを払いのけた。 「調子に乗り過ぎだ」 同級生の不良相手に無造作な顎クイ。 節くれ立つ五指が白い肌身にきつく食い込んだ。 「底抜けに図々しい奴。大体、最初に会ったときから気に喰わなかった」 「……」 「この髪の色。生活態度。姿勢の悪さ。さぞ自由な家庭に育ったんだろうな」 「……」 「躾けられない野良猫と一緒か」 いつものように無口でいる朔也に大和は言い捨てる。 「汚い爪で俺達の幸太を引っ掻くな。何ならイチから飼育し直してやろうか、駄犬……じゃなくて駄猫か」 「ッ……おい!!!!」 中傷に激昂したのは、当人の朔也ではなく。 「大和!!!!」 幸太だった。 背中から抱きついていた真希生を力任せに突き飛ばすと、やたら近距離で向かい合う大和と朔也の元へ、そして。 背伸びして大和の頬を引っ叩いた。 「っ……ねっ、猫のことバカにするな!!」 (……間違えた……) 朔也くんのことバカにするなって言おうとした……のに。 「……幸太……」 パチンと音立ててビンタされ、呆然としている大和を、幸太はキッとねめあげた。 「大和も!! 真希生も!! もう俺の幼馴染みじゃない!! 絶交だ!!」 (……こんなの、まるで小学生だよ、あーあ……)

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