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求愛フラストレーション-28
「俺と一緒にいて」
フードの下に、サラサラした前髪の向こうに、眦を薄墨で縁取ったような繊細な双眸が覗いていた。
「……朔也くん……」
手を握って引き留めてきた朔也に幸太は……どきっとした。
「ッ……片付け始まるから一緒に教室戻ろう?」
慌てて正気を取り戻し、諭しにかかろうとしたら。
(えっ)
もう片方の手も握られて……てんぱった。
「ど、どうした、朔也くん」
「……」
「両手繋ぐとか、な、なんかお遊戯みたいじゃ、あ、これゲーム? そーいう遊び?」
「……」
ぎゅっ……と、強めに両手を握られた。
「っ……朔也くんの手って……冷たいなぁ……」
もうどうしたらいいのかわらかなくて。
幸太は一先ず笑ってみた。
「幸太は」
「はいっ?」
「なんで転校生の俺に優しくしてくれた?」
(えっ……えーと……えーーーと……!!)
「そ、それはほら、席も前後に並んでたし、せっかく転校してきたんだから、おれを入り口にしてクラスのみんなと仲良くなってもらえたら……」
「みんなと仲良く?」
「うん、新しい場所でいろんなこと楽しんでもらえたらなって……」
「別にみんなと仲良くしたくない」
ひんやり肌寒い屋上入り口。
少し遠いところから生徒の笑い声が聞こえてきた。
「幸太だけでいい」
幸太の両手を重ね合わせ、朔也は、そのまま自分の両手も上から重ねた。
(朔也くんの手は冷たいのに)
熱い。
握られてる手も、顔も、カッカしてきた。
「ひじがいなかったら、幸太は、ウチに遊びにこなかったか?」
(……今にも心臓がせり上がってきそうな)
「そ、そんなことないよ」
「ほんとかよ」
「ほんとだよ!」
幸太が躍起になって言い返せば朔也は今頃になって尋ねてきた。
「さっき、大丈夫だったか」
「あ……うん」
「幸太、猫のため、すごく怒ってたな」
「えーと……あれは、その……」
「アイツを引っ叩いたの、かっこよかった」
「……大和の奴、言い過ぎだったから……さ」
幼馴染みをビンタしたことが脳裏に鮮明に蘇り、幸太は表情を曇らせる。
すると。
朔也は伏し目がちになった幸太の頭をよしよしと撫でた。
「俺も幸太の頭撫でてみたかった、ずっと」
(ちょっ……、待っ……、むりっ……!)
なんかいろいろと耐えられない……!!
「っ、それって妹の小春ちゃんみたいなっ!?」
(……なに言ってるんだ、おれは)
高校二年生の男と小学生の妹を同列に並べるなんて、き、気持ち悪いこと言ってしまった……。
「それはない」
(……うん、言われなくてもわかってた、今のは失言でした)
「小春にキスしたいなんて思わない」
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