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君は幼馴染み/男前×平凡
■求愛フラストレーション https://fujossy.jp/books/5316/stories/386838
↑このお話は上記の「IF番外編」になります/未読でも問題ありません
「今日、部活終わったらウチ行っていいか?」
掃除時間、幼馴染みの峯大和(みねやまと)に聞かれ、仲山幸太(なかやまこうた)は素直に「うっ」と拒絶の表情を浮かべた。
「来ちゃだめ、です」
「なんで」
「今日はお母さんがいるし」
「今日はおばさんもおじさんも帰り遅い日だろ」
共働きの両親の帰宅時間を把握している幼馴染みに幸太は顔を強張らせた。
廊下の隅っこでモップ片手に周囲を気にしつつ、隣のクラスの大和に小声で言う。
「だって、また……そーいうことするんじゃないの……毎日は、おれ、さすがにちょっと……」
バスケ部所属で長身、精悍な顔立ち、黒目のコントラストがはっきりしている大和は乗り気でない幸太をじっと見下ろしてきた。
「じゃあ、そーいうこと、しないから。部活終わったらお前んち寄らせて」
(ほ、ほんとかな~~……???)
隣近所で家族同士も親交がある幸太と大和。
幼稚園からの仲で小学校、中学、高校と同じところに通い続けてきた。
『峯くんの試合見てきたんだけど、やばかった、もう峯くんしか見えなかった』
『かっこいいよね、顔も体も性格も』
すくすく育った大和は現在180センチ、さっぱり黒髪で筋張った腕は男っぽく、しなやかに引き締まった体でスタイル抜群、どこにいても華があってぱっと目を引く。
部活では先輩に一目置かれ後輩から慕われ、教室では女子のみならず男子からも評判がいいクラスのリーダー的存在だった。
一方、幸太は身長169センチ、高二男子の平均体型まっしぐらで成績は可もなく不可もなし、集合写真では自然と後ろへ下がるような控え目な性格だった。
(大和は何やっても様になってかっこいいよな~)
出来のいい幼馴染みが常にそばにいて、卑屈にならずにいたかと言えばウソになる。
身長もっとほしい、筋肉羨ましい、おれも告白されてみたい、羨ましがるのは日常茶飯事であった。
だから。
『俺、幸太のことが好きなんだ、ずっと』
一ヶ月前となる六月半ば、そんな幼馴染みの大和から真剣に告白されたときには腰を抜かした、本当に。
『あわわ……』
『腰抜かすくらい嬉しかったのか?』
『違うっ……だって……おれ、男だし……大和は今までカノジョいたし……なんかもう家族っていうか、お兄ちゃんみたいだし……』
『お兄ちゃん?』
ひとりっこの幸太はしっかり者の大和をどこか兄のように感じていた。
告白されて驚く余り、つい本音をポロリして赤面した幸太に、大和は告げた。
『幸太のことを弟みたいに思ったこと、俺は一度もない。小学校一年の頃からずっと好きだった』
『あわわわわ……』
『俺と付き合ってくれないか、幸太』
いきなり付き合ってと言われても。
ずっと幼馴染みの関係で、恋愛感情など一度も抱いたことがなく、いつか女の子とデートしたいと憧れる日々にあった幸太には正直受け入れ難い話であった。
『それならお試しで俺と付き合ってみないか』
腰が抜けていた幸太を造作なく引っ張り起こし、向かい合い、大和は提案してきた。
お試しなんて幼馴染みに悪い気がしたし、ずっと毎日を共にしてきた相手に今更ながら恋愛感情なんて抱くものなのか、そのときの幸太はただただ懐疑的だった。
『頼むから、幸太』
大和に真っ直ぐに見つめられて、真摯にお願いされて、幸太は仕方なく提案を受け入れた。
のだが……。
「ん……む……っ……!」
七月半ば、常夜灯が点り始める午後六時過ぎ。
約束通りに自宅へやってきた大和に、幸太は、玄関でキスされていた。
(大和のうそつき!)
部活帰りで腕捲りした長袖のシャツにネイビーのズボンという制服姿の大和は、重たそうなスポーツバッグを玄関にどさりと下ろすと、即座に靴を脱ぎ、おっかなびっくり出迎えた幸太にキスしてきた。
初心な唇はすぐに抉じ開けられた。
熱もつ吐息と共に口内を訪れた舌先。
ただでさえ濡れているナカをさらにたっぷり濡らされた。
「んっ、ぷ……っ」
逃げがちな腰をしっかり抱かれ、熱心に口づけられて、幸太のちんまりした奥二重の瞳はたちまち潤む。
最初は非難するつもりで逞しい胸板にこぶしを振るっていたが、ひたすら唇を求められ、両手の力は次第に弱まっていった。
「ん……ン……ン……ん」
薄明るい玄関に引っ切り無しに紡がれる不埒なリップ音。
幸太のか細く呻吟する声も静寂に溶けていった。
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