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ベータな生徒はアルファの先生に選ばれたい!-6

「幸村、大丈夫か」 (!!!!) 樫井先生が名前呼んでくれた。 も……もうこれで十分……。 思い残すことはないです……。 「す……すみませ……ふぐぅ……っ」 「ふぐぅ、って。どこか痛くてつらいんじゃないのか」 「ち、ちが……ちがくて……テスト全然わかんなくて、あああ、赤点とるかもしれなくて、つい……」 両隣にいた生徒がぶふっと吹き出した。 この超絶簡単な試験で赤点を採る奴がいるのかと、こちらもまた堪えきれなかったようだ。 「……まだ時間はあるぞ、集中しろ」 そう言って樫井は離れていき、涙を拭った凌空は何とか回答を全て埋め、そうして学年末テストを終えた。 「りっくん、大丈夫か」 「最近ちょっと情緒不安定?」 帰りのホームルーム前に設けられた掃除時間、友達に心配された凌空は何とか誤魔化し、持ち場である階段へと向かった。 『幸村、大丈夫か』 自分の名を呼んだ樫井の声を思い出すと、その頬は自然と茜色に染まった。 (樫井先生が俺のこと心配してくれた) ガチでほんとにもう十分。 クラス担任どころか授業担当にだってならない先生に呼ばれることなんて、もう、きっとない……。 「幸村」 上の空で踊り場を掃除していた凌空は顔を上げる。 階段の上に立つ樫井と目が合うと、両頬どころか耳まで茜色に染まった。 「かしいせんせい」 思わず乙女みたいにモップの柄を両手で握り締めた凌空の元へ、急がない足取りで階段を下りて樫井はやってきた。 「さっきのテストでえらく取り乱してたな」 真正面に立つ樫井にどぎまぎしていた凌空は、はたと思うのだ。 (まさかカンニング疑われてる!!??) 「おわわわ」 「おわわわ、って、今も取り乱し中か」 「あああ、あの、決してカンニングじゃないです、俺は潔癖です……!」 「それを言うなら潔白だ」 真顔でツッコミを入れた樫井にじっと見下ろされて凌空の顔色は赤くなったり青くなったり。 「信号みたいだな、面白い」 (おおおお、俺、樫井先生とお話してる) 凌空は安定していなかった視線をおっかなびっくり樫井の目に向けた。 常に乾いた眼差しを紡ぐはずの、うっすら隈がある、深煎りされたブラックコーヒー感のある瞳を一生懸命見つめ返した。 「今日の午後、空いてるなら俺のウチに来い」 凌空は忙しげに瞬きする。 「俺のウチ、知ってるだろ」 「えっ、あ……ハイ……」 「用事があるなら来なくていい、この誘いは聞かなかったことにしろ」 踊り場にいるのは二人だけだったが、何人もの生徒が近くにいて学校全体が賑やかな中、かたまっていた凌空は樫井から告げられた。 「特別に幸村にだけ俺からご褒美をやる」

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