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ツンなジキルはインファンテリズムハイド持ち/大学生×年上クーデレ美人院生
経済学部・森永 の恋人である医歯薬学総合研究学科院生・杠葉 は冷たい。
「あまりベタベタしないでくれ」
部屋で二人っきり、恋人同士なら当たり前なスキンシップを真顔で嫌がる。
「クリスマス? 実験で忙しい」
イベントは平然とスルーされる。
「食事はもう済ませてきた」
いっしょにウキウキごはんのつもりが先に済まされていた……。
「ほんとに付き合ってんのかな、俺達」
おにぎりやポテチの包装が出しっぱなしという雑然としたワンルームで森永は一人悩む。
杠葉はいわゆるクールビューティー系だった。
黒髪で色白、線が細く白衣がとても似合っていて、一目見た瞬間森永は恋に落ちた。
それまでノンケであったのが嘘のように同性の彼にのめり込んだ。
性格はともかく外見が優れている杠葉を恋い慕う人間は他にもいた。
異性のみならずやはり同性にもちらほら。
周囲に負けていられるかと、持ち前の無鉄砲ぶりで森永はバカ正直に大学の構内片隅で杠葉に告げたのだ。
『経済学部二年の森永です!一目見たときから、すっ、好きです!俺と付き合ってください!』
年下である森永のド直球告白に杠葉は。
『そんなに大きな声を出さなくても聞こえる』
『すすす、すみませんっ』
『わかった』
『えっっ?』
『どうぞよろしく、森永君』
まさかのOK。
幸せだった。
しかし夢見ていた日々がこんな辛辣なものになるとは思ってもみなかった。
「俺のえっちが相当マズイとか……だったり」
自分で口にしてズーーーーンと落ち込む森永、ホモ歴半年。
半年前に杠葉に恋に落ち、告白して交際開始、エッチは……した、サイトで知識を漁るだけ漁って勇気りんりん本番に挑んだ。
『ど、どうでした……?』
事後、恐る恐る尋ねてみれば返ってきた答えは。
『別に』
ズーーーーーーーーン
可もなく不可もなくってことか、まぁ、最低とか言われるよりマシか、いや、マシなのか? ある意味ワースト一位じゃないのか「別に」って!?
ちなみにエッチは月に数回。
これまで男相手の経験がない森永から見て杠葉がどう感じているのかイマイチ把握しづらかった。
声もそんな上げないし、まぁ男だもんな、一応イッてはくれてるけど、余韻もそこそこにベッドから出てシャワー浴びるし、泊まんないで帰るし、あれ、そういえば俺ユズさんちに行ったことが……な……い……?
森永は考えれば考えるほど落ち込んだ。
男同士ってこんなドライなモンなのかと首を傾げ、散らかった部屋の端っこで悩みあぐね、寝落ちし、日を跨いで夜も深くなった頃に。
「うお?」
チャイムで目が覚めた。
大学の友人が飲み会帰りにまた来たのかと、豪快に欠伸をしつつ玄関ドアをガチャリと開いてみれば。
「えええっ、ユズさんっ!」
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