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ツンなジキルはインファンテリズムハイド持ち-2

深夜にアポ無し訪問なんて初めてである杠葉が吹き曝しの通路に立っていた。 皺のないハンカチで口元を押さえている。 明らかに具合が悪そうだ。 「教授に勧められて断りきれなかった……」 講座の飲み会に参加して酒を飲み、具合が悪くなり、自宅より近かった森永宅にやってきたらしい。 「ど、どうぞ、ああっ、来るって知ってたら片づけてたんですけどッ、汚くてすみませんッ、今きれいで冷たいお水もってきますッ!」 明らかにキレイ好きそうな杠葉のため、彼をお招きするときはきちんと部屋を片づけている森永であったが。 今日はプリントやら文房具やらプラスチック包装で雑然としている室内に泣く泣く通し、サンダルを突っかけて近所のコンビニまで恋人お気に入りのミネラルウォーターを買いにダッシュした。 ユズさん、相当具合悪そうだったな、弱ったユズさんも美人だなぁ、ちょっと色っぽかったかも、デヘヘ……じゃなくて。 「ありがとうございましたー」 彼が好きなミネラルウォーターと、彼が好きなヨーグルトを買って、森永はダッシュで自宅に戻った。 すると。 「あれっ、ユズさん?」 ベッドに寝せていたはずの杠葉がちらかったワンルームの真ん中にポツンと佇んでいた。 買ってきたものを一先ずテーブルに下ろし、森永は、ぼんやりしている杠葉に恐縮しつつも寄り添う。 「だ、大丈夫ですか? もしかして吐きそう……とか?」 杠葉は非常にのろのろした動きで真横に立った森永を見上げた。 「……どこいってたの」 きゅ、とTシャツの裾を握る。 「……おきたら、だれもいないから、びっくりした」 普段は冴え冴えと澄んでいる双眸がじわりと涙で濁る。 「ひとりぼっち、されたら、こわい」 ぴと、とくっついてきた杠葉に。 森永は背筋ピーーーーーーンッ。 両腕まで引き攣って指先はピクピク落ち着きなく痙攣した。 ユズさんがカワイイ……ッだと……ッ? 教授、お酒、サンキューです……ッッ。 「ご、ごめんなさい、ひとりぼっちにして、ほら、好きなお水とヨーグルト買ってきましたから」 「……ヨーグルト?」 胸元で俯いて鼻をスンスン鳴らしていた杠葉が急に顔を上げた。 ぱぁぁぁぁっと喜び溢れるその顔つきに森永のお胸はキュンッキュンッする。 「……ヨーグルトたべる」 カワイイ~~~どうしよ~~~ユズさんめっちゃカワイ~~~。 「たべさせて」 「えっ?」 杠葉は硬直赤面している森永をじーーーっと見つめた。 「もりながのヨーグルト、ユズにたべさせて……?」
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