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ツンなジキルはインファンテリズムハイド持ち-7

「もりながぁ」 その夜。 笑顔一つもなしにやってきた杠葉は一時間後にはとろんと表情を緩ませて森永に擦り寄ってきた。 「今日はなにしてあそぶの……?」 ちなみに。 その日、グラスに注いで杠葉に飲ませたものはノンアルコールだった。 マジですか。 いくらなんでもノンアルコールで酔っ払って普段の自分じゃなくなるって、うん、ありえないよな? やっぱフリなんだ。 ユズさん、ユズちゃんのフリして、俺に甘えてるんだ。 「っ……嬉しい、です、俺!」 自分を覗き込んでいた杠葉を森永はがばりと抱きしめた。 「ユズさん俺嬉しいです!!」 アホみたいに同じ台詞を繰り返した年下恋人の腕の中で杠葉はキョトンする。 「もりながぁ? どうちたの?」 「ユズさん……っ別にいいのにっ……性格とか、キャラとか、そんなのに縛られないで俺に好きなだけ甘えていいんですよ!?」 細身の体にシンプルな服を纏った杠葉に、講義が一日休みでずっと家にいてヨレヨレなトレーナーを着た森永は……言ってしまう。 「ユズさんがさっき飲んだの、ノンアルコールなんです!」 「っ……」 「ユズさんってば……余所余所しいです。今度からは好きなときに何も気にしないで、とことん甘えてもらって……あれ、ユズさん?」 様子がおかしい杠葉に愚直な森永は気が付いた。 深く項垂れて黙り込んだ年上彼氏。 華奢な肩が微かに震え出す。 ぽろりと二人の狭間に落ちた一雫。 「え」 「……ひどい」 「え?」 「ユズのこと試したの……?」 やっと顔を上げてくれたかと思えば涙している杠葉に悲しげに睨まれて森永はびっくりした。 「もりなが……ひどい……ばかぁ……」 ちょっと待ってくれ。 今の、俺の恋人は、どっちなんだ? ユズさん? ユズちゃん? 「……きらい……もりなが、きらい……だいきらい」 ぽろぽろ涙して自分を睨み続ける杠葉に森永は。 危機的状況も忘れて見惚れてしまった。 泣いてるユズさんも綺麗だな~……あれ、でもユズちゃんなんだっけ……いやいや、そもそもユズさんはユズちゃんのフリをして……そもそもユズちゃんは存在しない……。 「……おばけにさらわれちゃぇ……」 うわぁぁぁ~~かンわい~~。 うん、ユズさんでも、ユズちゃんでも、どっちでもいーや。 森永はグスグス鼻を鳴らす杠葉をぎゅっとした。 「ごめんなさい。ユズさんが素っ気ないから、俺、自信なくて。本音知りたくて、つい、試しちゃいました」 「……おばけに食べられちゃぇ……むしゃむしゃ、されちゃぇ」 腕の中でそっぽを向きたがる杠葉の涙で潤う頬に頬擦りする。 「大好き」 「っ……」 「ユズさんもユズちゃんも。大好きです。これからも俺と付き合ってください」 どストレートな森永の二度目の告白に杠葉は濡れそぼった双眸を静かに見張らせた……。

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