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奥までいっぱいマッサージ♪-2
住居兼診療所となっている「みくも治療院」は二階建てだ。
両開きの手押しドアを開けばたいてい無人の受付カウンター、壁には捲られるのが数年前から止まっている日捲りカレンダー、レトロ調な長椅子が一脚だけある待合室。
衝立を挟んだ奥が診療スペースとなっている。
ただただシンプルなマッサージベッドが一脚のみ。
「なかなか凝ってますね」
学ランを脱いでシャツ一枚になってうつ伏せになった杏彦。
もしかしたらいつも以上に凝っているかもしれない、何故なら緊張で全身強張っているからだ。
美容室でもシャンプーのときはやたら肩に力が入ってしまうが今日は特にひどかった。
いつもの三雲のオジサンがいると、まるで無防備であった、そこに息子という初対面の若い青年が現れて動揺しまくり、ショックでカチコチ状態だった。
……早く帰りたい。
……そうだ、別のこと考えて気分紛らわせよ、えーと……今日の夕飯どうしよ……冷蔵庫には何があったっけ。
ぐりぐりぐりっ
「んっ」
首の付け根を強めに揉まれて杏彦はつい声を上げた。
「ごめんなさい。強かったですか?」
「……大丈夫、です」
そこはいいです、が本音であったが、ついつい無難な返事をしてしまった。
普段は弱いと知っているから三雲のオジサンがスルーする場所を晴孝はしっかりマッサージしてきた。
ぐりぐりぐりぐり、もみもみもみもみ
「う、っ、ぅ」
そこだけは嫌なんだよ、くすぐったくて。
早くそこ終われ。
もう次いっていいって~~……!!
「ぅ、ぅ、ぅ」
縋りどころのない平らなマッサージベッド上でぎゅっと拳を握り、フルフルしている杏彦に、晴孝は微笑んだ。
「そんなに気持ちいいですか?」
ただただくすぐったい!!!!
「じゃあ、もう少し強くしてみましょうね」
ぐりぐりぐりぐり!!
「ひっっ」
背筋を駆け抜けた強烈なゾクゾク感に素直に零れた悲鳴。
涙まで溢れてくる。
やっと弱いポイントから両手が遠ざかって一息つこうとした杏彦だったが。
これまでマッサージされたことがない場所に行き着いて涙ぐんでいた両目を見張らせた。
もみ、もみ、もみ、もみ
……ケツ揉まれてる。
……三雲のオジサンにだって揉まれたことないのに、つーか誰にも揉まれたことないんですけど。
「あ、あの、ちょっと、そこは」
さすがに我慢できずに恭彦は肩越しにチラリと背後を仰いだ。
「お尻、嫌ですか?」
もみもみもみもみ、もみもみもみもみ
「う、わぁ……い、嫌です」
「杏彦君のお尻、いいカタチしてますね、さすが高校生です」
人の話聞いてください。
「ヒップラインが綺麗です」
オトナ女子なら喜びそうだが十代男子が言われてもピンとこない褒め言葉を述べ、晴孝は、またも杏彦が仰天する行動に出た。
ずるるるんっ
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