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カモフラージュ転じて恋と為す?/隠れむっつり眼鏡男子×大学デビュー男子

「男に告られたぁ?」 学食で洋食ランチを食べていた百井(ももい)は目を見開かせた。 「ああ、昨日。心理学科の一年から」 向かい側で和食ランチのお吸い物を飲んでいた高良(たから)は頷いた。 「へぇ~。男、ねぇ。どんな? 付き合うの?」 「付き合わないよ。どんな、っていうか」 「ん?」 「後ろのテーブルにいる」 「マジか」 百井は肩越しにチラリと振り返ってみた。 午後一の講義が始まったばかりの時間帯、混雑ピークからは脱したが程々にテーブルは埋まっていて学生たちの談笑がフロアを行き来していた。 「びびった、真後ろにいんのかと思った」 「真後ろじゃない」 「ん。もしかして。明らかにあやし~、あのフードかぶったお一人様?」 昨日の夕方、大学キャンパスの人気のない片隅でそれまで面識のなかった一年生の男子学生に告白された経済学部二年生の高良。 高校時代バレー部に所属していた彼は、長身、くどくない筋肉質、黒髪短髪に黒縁メガネ、顔立ちは色白あっさりめ、服装はこざっぱりめ、確かに同性に惚れられるのもわかるような雰囲気だった。 「断ったんだけど。そのまま家までついてきて」 「それってストーカーじゃ?」 大学デビューの百井、入学当時は毎月合コンに参加して念願の童貞卒業に至るものの長続きせず、四人目の彼女と先月別れたばかり、流行色に染められた髪、店員のオススメアイテムばかり購入する、軽そ~な外見だった。 大学で知り合った二人。 ほぼ同じ講義をとっていて顔馴染みとなり、セミナーでは論文発表のコンビを組んで互いのアパートに入り浸るようになり、今では月に何度かお泊まり雑魚寝するような仲だった。 「なんか厄介なのに好かれちゃったな」 こいつのことだから「え、ありえないんですけどwww」とか「むりむりwww」なんて言わないで「気持ちは嬉しいけど」みたいな前置きありきで断ったんだろーな。 「今日の朝も。アパート出たときから後ろにいて」 「え、こわ」 「注意しようとしたら逃げられた」 「お前なら追い着けるでしょ。まぁ深追いしないほうがいーか、何しでかすかわかんないもんな」 「向こうが自然と好意を失ってくれるのがベストか」 「あ」 「うん?」 「いいこと思いついたわ」 「いいこと?」 次回合コンのお誘いメールにOK返事を打ちながら百井は首を傾げ気味な高良に言う。 「俺が恋人のフリしてやるよ」

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