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リバーシング・キス-3
「ここはどこですかね」
「俺の家だ、雅誓」
「俺の服はどこでしょう」
「ナイフ加工によって斬新な出来上がりだったから捨てた」
夜景が一望できる高層マンションの一室。
家族とは別々に暮らしているヨシュアの家に勝手に運び込まれ、それどころか半裸にされていた雅誓は目覚めるなり。
「俺の手癖の悪さは知ってますよね」
キッチンで掴み取った果物包丁を逆手に翳したクラスメートにヨシュアはおどけたようにお手上げポーズを。
「確かにマナー違反だったな。でも手当のためだ」
包帯が巻かれていたりガーゼで止血されていたり、意識を取り戻した瞬間は警戒心で殺気立っていた雅誓だが、応急処置が施された我が身に気づくと刃先を下ろした。
「……手当は感謝するが。あんなに間近に顔を近づけて、どこを手当するつもりだった、貴様」
しかし包丁は手放そうとしない。
明らかにキスしようとしていたヨシュアに警戒は怠れず、刺々しい視線で容赦なく威嚇した。
「下心が少々行き過ぎたかな、謝るよ、お姫様」
「姫なんて呼ぶな、ッ」
騎士のようにその場に跪くなり片手をとられてキスされた。
警戒していたつもりが、その身にその唇を許してしまった自分に雅誓は密やかに混乱した。
「帰る、なんて言わないで。今日は泊まっていくといい。お前のために下心は檻に閉じ込めて鍵をかけた、はい、ガチャリ」
「……信用できない」
「ガチャ、ガチャ。ほら、三重に鍵をかけたぞ? 何なら板で強化するか?」
何なんだ、こいつは。
下らない。
下らなさすぎて……何だか……。
「そんな化け物、一生檻で眠らせてろ」
雅誓は粛々と跪くヨシュアに微かに笑った。
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