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恋してせんぱい-6
「はぁ……」
広い図書館の奥、分厚い書物が整然と並ぶ棚にもたれた本条は一人しょんぼり項垂れた。
古びた香りに隙間なく満たされた棚と棚の狭間。
何となく肌寒い。
じっと目を閉じていた本条だが、向かい側で親しげに話していた二人の上級生が瞼の裏に鮮明に蘇り、うっ……となり、慌てて目を開けて顔を上げれば。
「起きたか?」
いつの間に真横に立っていた鐘ヶ江に見下ろされていて仰天した。
「ッ……!?」
つい声を上げそうになった本条の口をすかさず片手で覆い、さらにぎょっとした下級生に鐘ヶ江は人差し指を唇前に立ててみせる。
「図書館での私語は厳禁」
……さっきまでトキ先輩とおしゃべりしてたのに。
鐘ヶ江の掌が唇に密着してどぎまぎ赤面しつつ、眼鏡越しにちょっと不満そうに見上げてきた本条に鐘ヶ江は小さく笑った。
「お前、立ちながら居眠りできんだな」
「ね、寝てたわけじゃ……」
「今日、アレの日か。だから調子悪ぃとか」
鐘ヶ江にからかわれて、まだ掌が唇にくっついていて。
耐えられなくなった本条は思い切って顔を背けた。
「お」
「も、もうそんな風に……からかわないでください、そういう冗談、苦手、です」
本条が一生懸命になって伝えても鐘ヶ江は何故だか笑みを零し続けた。
「やっぱ生理か」
『こいつトキに処女捧げたいんだと』
鐘ヶ江先輩は会ったときから僕のこと、ずっと、からかい続けてる。
トキ先輩とはあんなに仲よさそうにして、遊びの予定とか立てて、僕なんかいないみたいに二人で見つめ合って。
もしかしてあの言葉も冗談ですか?
好きとか、恋人とか、今みたいに、ただからかっただけ……?
「どうして……笑うんですか?」
「さぁな」
笑いながら言われたその一言に本条はうるっ……となった。
今度は何も言えずに無言でその場から離れようとした。
そんな下級生の腕を上級生もまた無言で掴んだ。
制服越しに容赦なく肌に食い込んだ五指。
予想外なくらい強い力にほんの少しだけ怯えて、本条は、ぎこちなく振り返った。
「勝手にどっか行くなよ」
まるで図書館の隅に沈殿して古びていくような空気を裂くみたいに鐘ヶ江は不敵に笑った。
信じられない。
「ぃやっ、ゃっ……先輩……っ」
本棚に縋りついた本条。
華奢で小柄な彼の背中に覆い被さった鐘ヶ江。
「本条、確かにアレの日じゃねぇみたいだな」
上級生の利き手は下級生の制服の内側に強引に潜り込んで。
下着の中にまでお邪魔し、幼さを残す性器に執拗に纏わりついていた。
「ふぅ、ぅ、ぅ……っっ」
まさかこんなところで。
いつ誰が来るかもわからないのに。
それなのに。
「でも、すげぇとろとろしたの、止まんねぇな……?」
図書館の隅っこで、耳元ギリギリで囁かれて、鐘ヶ江先輩にこんな……触られて……。
……きもちいい……。
誰かが来たら、見られたら、そう考えると怖いけど、そのゾクゾク感も……きもちよく思えてきた……?
「嫉妬してる本条、可愛過ぎんだろ」
……え?
「俺がトキと話してたら、そわそわして、目までうるうるさせやがって……ん、ひょっとして……確信犯ってやつか?」
制服と下着の内側に潜り込んだ鐘ヶ江の利き手がさらに過激に動き始めた。
もぞもぞと緩やかに波打っていたのが、衣擦れの音がより際立って、大胆になる手つき。
棚の狭間で本条は咄嗟に自分の手首に唇を押しつけた。
「ふぅ……っふぅぅっ、ふぅぅぅぅ……っ」
耳たぶまで真っ赤に染め、必死で声を出すまいとしている本条に鐘ヶ江はどうしても笑んでしまう。
年下で華奢で大人しい、眼鏡をかけた下級生の本条がただただ可愛くて。
胸底から込み上げてくる愛情につい頬が緩んでしまう。
「……いけよ、本条?」
「ゃぁぁっ、ぱんつ、よごれちゃぅ……っ」
「ッ……小学生かよ……ほら、無理すんな……」
「っ、っ、っ、っ!!」
肌寒い図書館の隅っこ、並ぶ本棚の向こうで生徒が勉強に励んでいる傍ら……鐘ヶ江に執拗に愛撫された本条は達してしまった。
射精の際にはまた口を塞がれた。
一段と上擦った吐息は鐘ヶ江の掌に吸い込まれていった。
「っ……っ……っ……ぷはっ……ぅぅっ……ぱんつ、よごれちゃっ……ぐす……っ」
「コンビニで買ってやるよ」
そう囁いて今にも崩れ落ちそうになっている本条の火照った耳たぶに軽いキスを落とした上機嫌な鐘ヶ江なのだった。
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