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おとうさんと(永遠に)いっしょ/美形息子×父/シリアス

■注意:鬱/虐待/ヤンデレ/メリーバッドエンド くるしい。くるしい。 息ができない。 つめたい。こわい。いたい。 お母さん、どうしてこんなことをするの? お母さん、僕のことが嫌いなの? お母さんお母さんお母さん。 「宝センパイ、今、付き合ってる人いないんですよね?」 私と付き合ってください! センパイのこと、入学式のときに見かけて、そのときからずっとスキなんです。 ダメですか……? 「いいよ」 常に優しげな微笑を湛える双眸に木洩れ日の残光を滲ませて、宝脩(タカラシュウ)は、震えていた下級生にキスをした。 「なぁ、宝。今のって高等部の子?」 「いや、中等部だって。一年生」 「うわっ。去年は小学生だったわけ?」 「犯罪~」 「断ったら可哀想じゃない? それに今にも泣きそうだったし」 「出たよ、女子にはとことんお優しい宝クン」 「小学生で脱童貞してっから余裕~」 「お前みたいにガツガツしてないからモテるのよ、宝は」 「高校生ってガツガツしてるのが普通だろ!」 「あはは……」 「おかえりなさい、脩君」 段差を上って門扉を開き、チャイムを鳴らすと、エプロンをつけた女性が脩を笑顔で出迎えた。 「ただいま」 「今日はね、脩君が好きな甘口のカレー作ったの」 「うん。いい匂い。益々お腹空いちゃった」 「眞一(しんいち)さんが帰ってきたらすぐご飯にしましょうね」 二階の自室に上っていく脩の背中に声をかけて、まだ大学生にも見受けられそうなうら若い女性は台所にぱたぱたと戻っていく。 部屋に入って制服のブレザーを脱ぎ、ハンガーにかけて、脩は開けっ放しになっていたカーテンを閉じようとした。 雨が、音を立てて、降り出していた。 お母さんお母さんお母さん。 「何してる」 後頭部を押さえつけていた手が離れたので、自由を得た脩は洗面器から勢いよく顔を上げた。 濡れたフロアにしゃがみ込むと小さな体を震わせて激しく咳き込む。 蛇口から出しっ放しの水が音を立てて束の間の沈黙を容赦なく脅かしている。 「脩、来なさい」 来なさい、と言いながら父親の眞一は自ら息子の元へ歩み寄ると速やかに抱き上げた。 放心している女をそこに残し、我が家を後にし、車を走らせる。 眞一の上着を頭から被った脩は助手席で相変わらず震えていた。 途中、コンビニで暖かいホットココアと甘いパンを買って、また車を走らせる。 夕方の見慣れた街並みの中を当てもなく。 やがて車は人通りが少ない裏通りでおもむろに停まった。 「脩」 震える我が子は据わらない首を左右に小刻みに揺らしながら眞一の方を向いた。 「お母さんに何回ああいうことをされた?」 小学校から帰ってきた脩が洗面所で手を洗っているといつの間に背後にやってきていた女はその小さな頭に無言で手を伸ばしてきた。 先月から、いきなり、それは始まった。 その時間以外、女は、いつもと何も変わらなかった。 「……僕……」 口を開いたら涙が零れた。 手の中には冷めてしまったホットココアの缶と、開封もせずに無意識に握り潰した柔らかなパンがある。 ふっくらとした生地は引き千切れて中味のクリームは飛び出ており、包装の内側に汚らしく付着していた。 「脩、こっちにおいで、お父さんの膝の上に」 眞一がシートベルトを外してやると脩は堰を切ったように父親に飛びついた。 その暖かな腕に抱かれて、安心し、冷たさも恐怖も苦しみも忘れて脩は泣いた。 「ごめん、脩……お父さん、気づかなくて……ごめんな、ごめん……」 眞一は我が子を抱き締めた。 少しでも彼の痛みが和らぐよう、できれば共有したいとも思いながら、強く。 「脩はお父さんが守るから……これから、ずっと……ずっと」

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