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来たれ第二次反抗期/お父さん×反抗期息子
「スマホ見ながらご飯食べないの、稜晴」
ダイニングテーブルで家族いっしょに晩御飯を食べていた中学生の松井稜晴 。
母親に注意されてもシカトしてスマホを見続けている。
学校で交わす会話とそう変わらないSNS上での他愛ないやり取りの方を優先している。
「こら、稜晴」
「あー。うっさい」
「お母さん、放置放置。リョウたんは反抗期なんでちゅよね」
「マジうるさ。クソ姉」
隣に座っている高校生姉におちょくられて言い返せば汚い言葉遣いはやめろと母親にすかさず注意されて。
稜晴は「ごちそうさま」も言わずにオカズを残してダイニングテーブルから離れた。
リビングのソファに寝転がってスマホポチポチを再開させた息子に母親はため息が尽きない。
最近いつもこんなだ。
一言何か言えば全て「うるさ」で返される。
家族よりもスマホ画面にもっぱら焦点を合わせている。
「誰に似たのかしら」
「お父さん似でないのは確実」
わかめ御飯を静々と口に運んでいた観光協会職員の浩信 は妻と娘の会話を聞き、目元に笑い皺を寄せて苦笑い一つ。
「淋しいな。親子なんだからちょこっとくらい似てほしかったんだけど」
翌日の晩御飯。
珍しくスマホもいじらずにダイニングテーブルについている稜晴。
姉が見ているバラエティ番組に視線を向けることもなく大人しく食事している。
やたら猫背になって俯きがちで姿勢は悪いが、目の前でポチポチされるよりかはマシだった。
「稜晴、ゆかりご飯、おかわりいる?」
「……い、いらな、ぃ」
「あ、リョウ、あんたの好きなポヨリン出てるよ」
「ポ……ポヨリン……あぅっ」
人気のある旬のアイドルを見ようとした稜晴だが、急にビクビクしたかと思うと、箸を床に落とした。
「あぅぅ……ぅ」
「ハイ。拾ってあげたから後で昨日買った新刊見せて」
「ッ……クソ姉、お前なんかに見せ、な、ッ、ッ、ふぎぃ」
「稜晴? どこか調子悪いの?」
茶碗を持ったままそわそわビクビクしている稜晴に首を傾げる母親と姉であったが。
「あれ、リョウ、スマホのバイブ鳴ってない?」
「ッッッ」
「ああ、稜晴じゃないよ、お父さんのが鳴ってた」
部屋着のポケットから浩信が携帯を取り出し、ご飯粒をぽろぽろ零していた稜晴、体奥で密かに鳴り渡っていた振動がやっと止んで、全身脱力させたのだった……。
「今さーおふろ誰が入ってんの?」
「お父さんと稜晴」
「えっ? ほんと?」
「最近、稜晴があんなでしょ? いろいろ話すことがあるからって、一緒に、ね」
「へー。ちょっとキモイ」
「こら、菜々子っ」
「ごめんごめん」
夜九時前後、リビングで母親と娘はそんな会話を交わし、一方浴室で父親と息子は。
「ぬ、抜いて……早くコレ抜けよッ、オヤジッ」
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