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ぱぱぱぱ彼氏-2

金曜日、午後四時半。 「きりーつ、礼、」 「「「さよーならぁ」」」 帰りの挨拶が済むと一先ず梢は着席した。 ちょっと厳しい担任が教室を出て行ってから学ランとシャツの第一ボタンを外し、スマホをチェックしていたら、女子がちらほら群がってきた。 「間中くん、今からヒマ?」 「帰宅部みんなでどっか遊びいこーかなって」 「カラオケ行ってファミレスでごはん、とか、どーかな?」 梢はスマホに釘づけのまま答える。 「行かない」 「えー」 「行こーよ、ムラくんとか柴タンも来るよ?」 「行かない」 クラス一、いや、学年一モテ男子な梢とぜひとも放課後をご一緒したい女子一同だったが、次の言葉でみんな心が折れた。 「今日は、ぱ……おとうさんと外食するから。家族二人で。だからムリ」 梢が父子家庭というのはクラスメートに何となく知れていて、唯一の家族だという父親を引き合いに出されると、もう誘えない、遠慮する、同時に家族思いであることにさらに株がぐんぐん上がる。 「あ、でも」 待ち合わせは七時。 まだけっこー時間あるから暇つぶしに。 「カラオケには行ってもいー」 そうして七時前までクラスメートのカラオケに付き合った梢。 十名には満たない他の面々も二時間で切り上げて店を後にし、車で混み合う表通りを一緒に歩いていたら。 「梢!」 ファミレスと待ち合わせ場所が近かったこともあり、偶然、到着する前に瑛介とばったり出くわした。 「え、あの人おとーさん?」 「うちのおとーさんより若っ」 「俺、知ってる、まだ二十代だって、いでッ!」 「うるさ、よけーなこと言うな、じゃーね」 あんまりにも若い父親にびっくりしているクラスメート一同に手を振るでもなくそれだけ告げて梢は駆け出した。 ちょこっと離れたところで待っていた瑛介は息子の同級生に軽く会釈し、梢に引っ張られて、前へと歩き出す。 「遊んでたんだ?」 「うんっ。カラオケ」 「楽しかった?」 「まーまー!」 スーツにビジネスコートを羽織ったスマートな瑛介。 梢自慢のぱぱだ。 本当はその腕にしがみついてらぶらぶ全開で歩きたい。 大好きぱぱと恋人モードでいちゃつきたい。 「……ねー、えーすけ」 「こら。外ではお父さん」 拗ねてぷいっと横を向いた梢に瑛介は苦笑した。 髪についているゴミをとるようなフリをして、耳を、そっと指先で撫でる。 「家で、ね? 明日は休みだから。今夜いっぱい、できるから」 冷えていた指で一瞬だけ耳たぶをきゅっとつねられて。 梢のぺちゃんこ胸は、ぱぱのえっちぃ……、と、きゅんきゅん高鳴った。 しかーし二十代といえども一週間分の疲労はやはり堪える。 よく訪れる鉄板焼き店でステーキを食べて生ビールを二杯飲んだ瑛介は。 「zzzzz……」 家に帰宅するなりばたんきゅー、ソファですやすや寝る始末。 チーズお好み焼きや海鮮チヂミをお腹いっぱい食べていた梢はムゥ、としたものの、気持ちよさそうに眠る瑛介の寝顔を見ている内に不満度は自然と降下し、むしろ「お仕事お疲れ様」的感情が湧いてきて。 「ぱぱ、ありがと」 梢は瑛介のほっぺにちゅっと労いのキスを落とすのだった。 土曜日、午前十一時半。 カーテンが問答無用に開かれて明るい陽射しが寝室に満ち、枕に突っ伏していた瑛介はぎゅっと瞼に力を込めた。 「……ん? もう昼?」 「おーひーる! 朝から何も食べないで待ってんだよ? 起きろー!」 ぼふっと布団越しに馬乗りになってきた梢に瑛介は止む無く目を開けた。 「おはよーぱぱ」 「おはよ……あれ、俺このまま寝ちゃったの……?」 「そーだよ? おれが脱がさなかったらコートもスーツも着たままソファで寝てたよ?」 中学生男子の梢、ソファで熟睡していた父親をワイシャツとパンツ姿にすると、パジャマ下だけ着せて、ずるずるずるずる寝室へ運んでやったのだ。 「んー……」 「こらー寝るなー」 また瞼を閉じたら布団越しにぼっすんぼっすん叩かれ、瑛介は苦笑して自分に乗っかる梢を見上げた。 「ごはん食べよ?」 オフホワイトのラフさ満開ざっくり網みニットにダメージデニムのミニスカート、下には黒タイツ。 「……かわいい、梢」 寝起きでふにゃふにゃふやけていた褒め言葉ながらも梢は満更でもなさそうに笑顔を浮かべた。 「梢、おはよーのキスは……?」 「……もー、しょーがないなぁ」 梢は瑛介の胸に両手を添えてボサ髪の瑛介におめざのちゅーを。 すると。 「んっ?」 ぬるりと口内に滑り込んできた舌先。 ふにゃふにゃ寝起きのくせに、その舌遣いは冴えまくっている、さもえろえろに梢の唇奥を攻めてきた。 軽めに済ませるはずが濃厚ちゅーに移行されて甘い吐息を洩らす梢。 皺だらけのワイシャツ腕がそんな女装息子に絡みつく。 主におしりに。 極端に短いスカート下に簡単に潜り込んだ両手がタイツ越しに双丘をこれまたやらしくナデナデナデナデした 「昨日の約束、今から実現してあげる、梢」 「……遅いもんっ」 「ごめんごめん」 ぴたぴたタイツの中に忍び込んできた両手。 らぶりーな苺柄紐パンティの薄い布越しにおしりをもみもみ、もみもみ、もみもみ。 真上でぶるぶる愛らしく震える梢の耳元で瑛介は囁いた。 「梢のぜんぶ、きもちよくしてあげる」

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