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兄弟フレンド-2

「結婚式、どうしても出てくれないんだ?」 規則正しく連なる石畳に設けられたオープンカフェ。 「俺が出たら祝いムードがブチ壊れるぞ」 昼下がりの柔らかな風に街路樹の葉が微かに揺れる。 「そもそもイギリスのどこぞの庭園貸し切って、だろ。ありえねぇ」 イスの背もたれに踏ん反り返ってアイスコーヒーをがぶ飲みする兄に弟の雪哉(ゆきなり)は微笑んでみせた。 「彼女の夢なんだ。家族と親しい友人だけ呼んで、外国の静かな田舎でガーデンウェディング」 その名の通り、色白で、まるで雪女が産み落としたような。 異性どころか同性の視線も惹きつけるその美貌ぶり。 三十四歳である兄の五歳下、自分が講師として勤務する心理学講座の大学教授の娘と結婚式を間近に控え、とても満ち足りているように見えた。 兄弟の両親は彼らが小さい頃に事故で亡くなった。 二人は父方と母方、別々の親戚に引き取られて離れ離れに育った。 今は苗字も違う。 「淋しいな」 まるで壊れ物のように繊細そうで儚げな弟の雪哉。 「祝い金は弾んでやるよ」 ブルゾンでタトゥーは隠しているがやはり一般人にはない鋭さを滲ませる兄の雅巳。 「ねぇ、兄さん」 日よけのパラソルの下、それまでと僅かに声色の変わった呼びかけ。 当てもなく周囲に巡らせていた視線をやれば雪哉は雅巳だけを真っ直ぐに見つめていた。 「今日、夜、行ってもいい?」

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