「お尻、いれちゃ、だめ？」 朔真兄さんの頬がさっきよりも赤くなった。 濡れた口元を片手で覆い、やっぱり目を逸らして、もごもごと口ごもる。 朔真兄さんは渋っている。 嫌がることはしたくないから、俺は、挿入を諦めた。 部屋着のハーパンとパンツをずるっと下ろしてペニスを取り出した。 「……！」 朔真兄さんはまっかっかになってしまった。 頑なに目を逸らして見ないようにしている。 俺は耳まで赤い朔真兄さんにどきどきした。 俺の肩を掴んでいた手をとって、骨ばった手首を掌で包み込む。 「じゃあ、いれないから、見なくていいから、しごいて？」 息が上擦って甘えたような声になってしまう。 朔真兄さんはぱちぱち瞬きして、掌が俺のペニスに到着すると、さらに睫毛を震わせた。 「俺の、握って、朔真兄さん……」 掌に硬いペニスを押しつける。 腰を振って擦りつける。 朔真兄さんの骨ばった五指がぎこちなく俺のペニスに絡まった。 たったそれだけのことで俺は声を上げた。 「あ……っ」 竿にゆっくりと絡みついて、緩々と、ピストンを始める。 ぞくぞくした。 自然と腰が揺れてしまう。 「朔真兄さん、もっと、ぎゅってして」 朔真兄さんは俺の我侭をすぐ叶えてくれた。 掌で強めに締めつけられて、ぐちゅぐちゅ、擦られる。 俺はピストンに合わせて腰を振った。 目を瞑って、朔真兄さんに挿入している光景を脳裏に浮かべて。 朔真兄さんの体を抉じ開けて狭い中にいっぱいペニスを出し入れしている光景を。 「あ……きもちいい……っ」 「……潤平」 「兄さん、もっと……もっとして」 きっと朔真兄さんの中はどこまでも熱く湿っていて、きつくて。 それでも俺のペニスを根元までいっぱい頬張ってくれて。 きっと誰よりも優しく迎えてくれる……。 「あ……あ……朔真兄さん……！」 俺はなりふり構わず挿入時と同じように腰を振った。 発情した動物みたいに、朔真兄さんの真上で、その手に囚われたまま。 かつてない最短時間で俺は射精した。 朔真兄さんの手の中に思う存分精液をぶちまける。 一瞬、息ができなくなったくらい快感に痺れた。 「あ……はぁ……っ、あっ」 飛び散った体液が朔真兄さんの服にもかかっている。 射精の余韻で喘ぎながらも俺は朔真兄さんに謝った。 「ふぁ……ごめんなさい、朔真兄さん……服、汚して……」 「……いや」 「……手も……べちょべちょだ……ごめんね……」 自分のペニスから生み落とされた精子を俺は舌で拭った。 骨ばった指にしゃぶりついて、一本一本、綺麗にしていく。 「じゅ、潤平……」 朔真兄さんは止めずに、相変わらず真っ赤な顔で、俺が指を舐め上げるのを見つめていた。 あれだけ逃げがちだった視線が向けられて嬉しい。 俺は汚れていない方の手にも舌を這わせた。 爪がきちんと切られた指を三本口に含んで、あたためる。 太腿に触れる感触。 朔真兄さん、勃起してる。 「朔真兄さん、硬いよ？」 俺の問いかけに朔真兄さんは返事をしなかった。 代わりに兄さんは弟の俺に言ったのだ。 「……いいよ……潤平の、いれても……」