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色恋本番は二十歳を過ぎてから-6
なんで怒ってたんだろう、リョウさん。
了成に言われた通り、とっとと弁当とケーキを食べ、給湯室で歯磨きし、事務所奥の部屋で床についた博晶はクッションを抱いて欠伸をした。
「……あ」
分籍届、出さないと。
あの人達の輪から俺の名前を消さないと。
天井の蛍光灯を消して暗い室内、簡易ベッドの上で寝返りを打った博晶は傷んだ壁をぼんやり見つめた。
リョウさんと出会っていなかったら俺はどんな二十歳を迎えていたんだろう。
確実に言えるのは。
今、この二十歳が一番幸せ。
それだけ、かな。
「ふわぁ」
眠い、最近、朝ずっと……シてるから。
「早く寝よ」
明日は朝一で草刈りの仕事が入ってるんだよな。
「ヒロ」
寝入り端に聞こえた呼号。
「ん? リョウさん……?」
「起きろ」
明かりのない暗い部屋、Tシャツにボクサーパンツという姿でクッションを抱いて寝ていた博晶はパチパチ瞬きした。
「この根性無しが」
その台詞に寝惚けていた博晶は覚醒し、ベッドに乗り上がって自分を跨いでいた了成を視界に捉えた。
夜気よりも暗い髪をサラリと滴らせた了成。
近くにある自宅へ一端帰宅したものの、どうしても気に食わず、また事務所へ舞い戻って助手の元へやってきた。
「へらへらしやがって」
「え?」
「久坂にえらくじゃれついてたな、お前」
旧知の知り合いに頬を撫でられて満面の笑顔を浮かべていた博晶に何でも屋は苛立っていた。
「節操無し」
「えええっ! 俺はただ!」
「ただ、なんだ」
「久坂さんは誰にでも触りたがる人なんだな、って。俺、てっきりリョウさんのこと特別扱いして触ってるのかと思ってたから」
「……」
「久坂さんとリョウさん、特別な関係なのかなって思ってたから。そうじゃないんだってわかって、ほっとして、つい」
「うるさい」
促されたから回答した博晶は「ごめんなさい」と了成に謝った。
「あの、リョウさん」
「なんだ」
「誕生日の前の夜、どうして、あんな」
「うるさい」
「ごめんなさい」
ていうか。この体勢だと、俺、催しそうです!
「どうした。もぞもぞして。勃ったのか」
「うう……ごめんなさい」
「なぁ、ヒロ」
毛布を鼻の上まで引っ張り上げて恥ずかしさに耐えていた博晶に了成は問いかけた。
「俺とセックスしてみるか」
セセセ、セックス、リョウさんとセックス。
白いワイシャツを腕捲りしてスラックスを履いた了成の真下で博晶の心臓はどっくんどっくん鼓動を加速させた。
急に喉の渇きを覚えて何度も唾を飲み込む。
掠れ気味な声で紡がれた衝撃発言に全身が発火するような。
「あ、あのリョウさん、それは……俺、期待していいんですよね?」
「……」
「俺は。リョウさんのこと。好きです。リョウさんも……俺と同じ気持ちだって、そう理解していいんですよね?」
何さらっと告白してやがるんだ、こいつは。
「リョウさん」
了成はもう「うるさい」とも何も言わずに真っ赤になっている博晶の唇に唇を重ねた。
博晶はやっちまった。
「あああっ! やっぱり我慢できな……ッ!!」
「ッ……ヒロ」
挿入前だった。
正確に言うならば了成の後孔に発熱しきったペニスを押しつけ、何とか捻じ込もうと調整している段階で粗相してしまった。
ワイシャツを全開にして下の着衣は脱ぎ捨てていた了成の肌に飛び散った童貞飛沫。
ヒク、ヒク、悶えるペニスの先から白濁が噴き零れていく。
「あうう……っほんと、ごめんなさぃぃ……リョウさぁん」
素っ裸になってハァハァしている博晶を伸び気味の前髪越しに睨み、了成は、彼の手を。
「……俺のこともいかせろ、博晶」
自分の熱源へ導いて過激な愛撫を強制してきた。
年下のくせに自分より大きな手に握らせて、節くれ立つ指に長い指を上から絡め、しごかせる。
「ッ……リョウさん」
「もっと、ちゃんと……ッいかせる気あんのか、お前……ッ」
「ッ、ッごめんなさぃぃッ」
了成に凄まれて乙女のように胸を高鳴らせた博晶、五指の輪で熟れ育った熱源を包み込み、いきなりがむしゃらにしごいてきた。
「ば……ッいきなり……!」
自分の真下で喉を反らして息を上擦らせていく了成に博晶は見惚れた。
衝動に従ってキスをした。
手の中でさらにどんどん昂ぶっていく彼のペニスをしごき立てながら半開きの唇に夢中になった。
「ン、ん……ッ!!」
危うく助手の舌を噛み千切りそうになった、絶頂に打ち震えた何でも屋なのであった。
「リョウさん、あの、次はちゃんとやりますね!」
「もし次もまた暴発したら。潰す」
「え……? 潰す? 何を……?」
次こそちゃんと俺を壊してみろよ、博晶。
end
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