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強気上司とラブホHって経費で落とせますか?/部下二人×強気司法書士上司=3P
総合法律事務所に勤める倉科譲 司法書士はここ最近ご立腹の嵐だった。
新人が使えない、まるで使えないのだ。
「あれー、どこに紛れっちゃったんですかねぇ、簡裁からの判決正本」
いつもへらへらしている、高校卒業後に所属した実業団バレーボールチームにてエースだったという長身の椎葉拓斗 、群れる女子事務員に混じって平気でランチを食べるチャラ感満載の部下。
「すみません……法務局の私書箱のダイヤル、番号忘れました」
長めの前髪で猫背、どんな顔立ちをしているのか未だにはっきりわからない新卒の双海恭ノ介 、おやつ刻になれば必ず自販機前で居眠りしているヤル気感ゼロの部下。
全く悪びれるでもなく自分のデスク前でへらへら、ぼんやりしている二人のだめだめ部下をぎっと睨みつける倉科、温くなったお茶を一口飲んで乾燥していた喉を潤し、怒鳴る準備を。
「お前ら学生気分が全く抜けていない!!」
「えー俺は社会人してましたけど?」
「……僕、バイトしてました、弁当屋の厨房で」
ああ言えばこう言う部下二人。
眼鏡をずり上げた倉科は眉間を押さえて盛大に唸った。
さて、どうしてこんなだめだめ若者が就職できたのか、答えは簡単、ツテ、だ。
二人ともこの事務所を表向き担っている大先生のご親戚にそれぞれ当たるのだ。
「倉科君、ウチの甥っ子をまぁよろしく頼むよ」
「恭はなぁ、手先がそりゃあ器用なんだ」
流石、面倒な仕事は下に押しつけて好きな時間に出社して退社する貴方方の血が流れているだけのことはありますよ、この二人。
さて、午前中に裁判所で訴訟が三件、登記関係の仕事で銀行や不動産を慌ただしく行き来し、午後は法テラスの出張相談に出、事務所に戻れば自己破産の相談で予約のあった依頼者の話を聞く大忙し倉科、猫の手もあったら借りたいくらいだった。
「あのー倉科先生ー、この訴状の印紙っていくらでしたっけー?」
「……すみません、過払いって完済から何年経ったら時効だったか、忘れました」
ああ、使えない部下の手より猫の手のほうが本当マシだ、何せ肉球があるからな、あのプニプニで癒してくれるからな。
そうして一日の業務をやっとこさ終えたお疲れ倉科。
帰る準備をしていたら、急ぎというわけでもない作業でだらだら超過勤務していた部下二人がやってきた。
「先生ー、飲み連れてってくださーい」
「……他の補助者の人達は他の先生達と行ってますよ?」
それはな、とても優秀な司法書士補助者だから日頃の礼として食事に連れて行くわけだ、だがしかしお前ら二人は猫の肉球以下、よって奢ってやる謂れはどこにもないわけだ。
でも、まぁ、懇々と説教するいい機会かもしれない。
まずい酒にしてやろうじゃないか、なぁ、ゆとり世代の落とし胤ども?
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