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強気上司とラブホHって経費で落とせますか?-6
半年と数ヶ月が経過した今頃になって開業祝いにやってきた、かつての部下、双海。
相変わらずの猫背、邪魔くさそ~な長い前髪で、どんな表情を浮かべているのかさっぱりわからない。
「これ……どうぞ……そこのコンビニで買ってきたシュークリームです」
のろのろ目の前にやってくると片手でコンビニ袋を差し出してくる。
破天荒マナーの元部下に、倉科、さらに顔にびきりと亀裂を走らせるかと思いきや。
「ありがとうな、双海」
両手でコンビニ袋を受け取って笑った。
三人掛けの応接ソファに促して座らせた後、湯沸かし器を使用して速やかに二人分のホットコーヒーを淹れ、向かい側の自分専用一人掛けソファに座った。
「久しぶりだな、双海、元気にしてたのか?」
「はい……倉科先生は?」
「ここ開いた当初はバタバタで少し痩せたがな、今は体重戻ったし、年相応に元気ってところか」
「……綺麗に片付いてますね」
「そりゃあ客商売だしな、依頼があって成り立つんだ、印象はよくしとくに越したことないぞ」
「……先生、僕、ここで働いてもいいですか?」
「ただ最近髭剃りさぼってるからな、自分自身の印象がどうだか……、は? 何て言った、双海?」
シュークリームを半分まで食べていた倉科、聞き返す。
熱々コーヒーを半分まで飲んでいた双海、続ける。
「朝は……九時出勤でいいですか? 八時半はちょっと……ムリです」
「たった三十分の差で何が無理なんだ、いや、違う、違うぞ、双海」
「あ……残業は……倉科先生となら頑張ります、その代わりお昼寝……」
「ここは保育園じゃない! じゃなくて! 俺はお前を雇わないぞ、双海!」
「?……どうしてですか?」
さも心外そうに聞き返してくるな、双海よ。
お前、俺にしたことを忘れたのか、双海よ。
お前がここにいたら俺は始終ケツの心配をしてなくちゃならんだろうが!
「……わかりました、お昼寝、ガマンします」
「違う!! そもそもだな、お前があの事務所を辞めるなんて双海先生が許さんだろ?」
「……僕、あそこ、今日で辞めてきました」
双海がガラステーブルに身を乗り出してきた。
前髪越しに隠れイケメンフェイスがちらりとお目見え。
「倉科先生と働きたいんです、僕」
倉科、少女マンガの登場人物でもないから、イイ年したおっさんだから、別にどきどききゅんきゅんしない……?
「帰れ」
「僕、ずっと先生に恋してます、倉科先生」
「か、帰れ」
「倉科先生の怒鳴り声、これからもずっと聞きたい、です」
「ふ、双海」
「今から、先生にキス、します」
禁煙した倉科の唇は、今は、甘い生クリームの味とカフェインがまざりあって、ほろ苦い味がした。
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