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美しい薔薇には棘どころか牙がある-3
それから程なくして翔汰朗はイバラ姫なる麗人の凶暴ぶりを目の当たりにすることとなった。
「こンのクソガキゃ、なめた真似しやがって」
体験練習で寄ったジムの帰り、自分が素手で殴り倒した柄悪男二人と、追加二人、計四人に待ち伏せされた。
しかし彼らの報復が振る舞われる前に麗人は翔汰朗の前に忽然と現れた。
「手ぶらやったけん。見た目かっこわるかけど」
麗人は近くの中華料理店で借りてきたという中華包丁と出刃包丁を手にしていた。
十分後には指やら片耳が欠けて呻く血に塗れた四人が路地裏の暗がりに取り残された。
「翔汰朗クンの正体、相手にも割れとったねぇ」
頬に飛んだ血飛沫もそのままに笑う麗人に手を引かれて夜の繁華街を突き進んだ。
翔汰朗に不安や恐れはなかった。
ただ体中に興奮が渦巻いていた。
このままこの人にどこまでもついていきたい、そんなことさえ、思った。
翔汰朗の目の前で次から次に家畜の鳴き声じみた悲鳴を襲撃者に上げさせ、見事な包丁捌きを見せた麗人だったが。
「ン……拳にも負けず劣らずな代物持っとるし……なぁ、翔汰朗クン?」
ラブホのベッド、翔汰朗の真上で絶妙な腰遣いまで惜し気もなく披露していた。
肉孔の奥の奥まで招かれた十代ボクサーの剛直ペニス。
迸った鮮血の薫りに中てられて興奮冷めやらない体、行き場を探して駆け巡っていた熱が集中し、いつになく滾る肉茎を尻奥の粘膜で容赦なくしごいてやりながら。
白いシャツだけを身につけた麗人は全裸の翔汰朗を誘惑するのだ。
「なぁ、翔汰朗クン……興味なか? 合うとると思うとけど……ね」
欲望ひしめく裏の世界に。
「テキトーな気持ちでボクサーなってテキトーに家族つくってテキトーに死ぬのも悪くなかとよ……けどね……もったいなか」
こんなに熱い締めつけに包み込まれるのは初めてだった。
日々トレーニングを欠かさずに作り上げた逞しい体を汗で隈なく湿らせ、翔汰朗は、腹筋に両手を突いて小刻みに腰をくねらせている麗人を薄目がちに見上げた。
「おいで、翔汰朗クン?」
「ッ……漣さ、ん」
「麗人でいいけん」
視線を落とせば視界に入るは麗人の屹立したペニス。
茂みの中央で仰け反るようにして勃っている様は卑猥だった。
緩々と先端割れ目をなぞっていた彼自身の指が退けば、ぬるりと、透明な糸が引いた。
「そんな見らんで」
かき上げられていた髪が額に落ちて切れ込み鋭い眦にかかった。
長い睫毛の影が昏く瞬く双眸に吸い込まれていく。
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