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美ボイス刑事さん、いらっしゃあい!-4

人気のない真夜中の公園。 明かりに乏しく、抜ければ新興住宅地が広がるものの、生い茂る樹木で思いがけない死角が蔓延る都会の落とし穴。 耳にイヤホンをはめた高校生と思しき少年がそんな落とし穴に差しかかろうとしていた。 春物のカーディガンにネクタイ、チェックのスラックス、肩にスクールバッグを引っ掛け、やたら光沢を発するローファーでブランコや滑り台といった遊具の点在する公園内を急ぐでもない足取りで突き進んでいく。 片手には携帯電話。 ディスプレイが発する淡い光を浴びたフツメンフェイスは特に警戒心を浮かべるでもなく……? そこへ。 茂みに潜んでいた彼が注意深げにゆっくり姿を現した。 キャップにサングラス、マスク、全体的に黒っぽい出で立ちの男は少年の背後へ慎重に近づいていく。 その片手には少年が持つ携帯電話よりも遥かに物騒なスタンガンが。 イヤホンをして聴覚が閉ざされているのをいいことに、早めに電源を入れ、バチバチと不敵に鳴る凶器を少年の首の後ろへ……。 「容疑者確保!!!!」 男はぎょっとした。 振り返るや否や手首を手加減なしに捕まれ、痛みにスタンガンを取り落とし、予想もしていなかった一声を聞いてさらに驚愕した。 「凶器はスタンガン! 容姿も酷似! 二十三時十一分、現行犯逮捕します!」 高校生と思しき少年は、いや、○○署刑事課捜査第一係安芸巡査部長はネクタイに仕込んでいた小型マイクに報告し、驚きで抵抗する余地もない男を速やかに取り押さえて手錠をかけた。 五分も経たずして近辺に待機していた同係の先輩刑事が覆面パトカーを走らせて駆けつけてきた。 「安芸、ごくろーさん」 「しっかし違和感ねぇな、男子高校生コスプレ」 「次は女装しろよ、満員電車乗ってノーマルな痴漢対象の囮捜査いってこい、ッ、うぐッ!」 「何でですか、ヤですよ、それに痴漢は痴漢です、ノーマルな痴漢なんてこの世に存在しません」 尾行中に電車内で痴漢された経験がある安芸はデリカシーのない先輩刑事の頑丈な脇腹に全力の肘鉄を喰らわせた。 今年初めから管轄内で発生していた、スタンガンを用いて中高生の少年三人を襲った連続強制わいせつ事件、その犯人であろう男を連行する。 夜風に揺れるソメイヨシノには蕾。 春の息吹が仄かに香り出す頃、断つべき悪夢は一人の若い刑事によって終わりを迎えて……。 『安芸刑事』 イヤホンから流れ込んできた改まった呼号に、車に乗りかけていた安芸は、つい一時停止に。 『よくやりました』 「周防……主任」 『長田君、賀川君、南君。次の被害者が出ないことを望んで捜査に協力してくれました。彼らの勇気と君の功績を私は心より称えます』 「安芸ぃ、車出すぞ、早く乗れ」 「あっ、はい!」 安芸は慌てて助手席に乗り込んだ。

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