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おれってあなたに跪きたいの-2
『それぇ……こわれひゃ……ッッ』
鼓膜に蘇った青少年の甘い悲鳴。
宗方は無意識に口元を片手で覆った。
乱れていた前髪がさらに崩れて額にハラリ。
『アンタ死んでんの、どれ呼べばいーの、救急車? パトカー? 霊柩車?』
ホテルを出て酩酊して街を彷徨った挙句、路地裏に入り込んで建物と建物の隙間で倒れていた宗方を青少年は発見した。
黒ずくめで色白で目つきの悪い彼は泥酔いした宗方を細い肩に引っ掛けてこのワンルームへ連れて帰った。
一先ず上着を脱がせて。
ネクタイを緩めようとして。
その手をぱっと掴まれて。
突拍子もなく始まった捕食的性交ショー。
強姦魔じみた手つきで細身のブラックスキニーとボクサーパンツをずり下ろされて獣交尾さながらにバックで。
根元から先端まで熱く火照りきったペニスで犯された。
親切心というか、暗がりで蹲っていた宗方を人間というより大きな動物として捉え、拾った感があった青少年は。
抵抗しなかった。
好き者な性格の彼は酔っ払って理性が飛んだ男の荒淫をむしろ歓迎した。
『ふあ』
手綱をとられるように両腕を後ろへ引っ張り上げられて馬扱い、尻を頻りに打ち鳴らされてペニスを何度も何度も小刻みに突き刺された。
『はッッッ』
そのまましばしバックで激しく揺さぶられて中出し、された。
ガクガク震えながらも肩越しにチラリと見てみれば、汗で顔面を湿らせながらも、無表情で射精に及んでいる宗方と眼鏡越しに目があって。
かつてない甘やかな怖気に心身を巣食われた。
血肉の一片まで残さず捧げたいと崇拝にも似た感情を抱いた。
『んんんッッ』
次はがばりと体を折り曲げられ、勃起を保ったままのペニスで真上から酷なまでに仮腟連打された。
青少年は半開きの吊り目で真上に迫る無表情の宗方を食い入るように見つめていた。
まるで裁かれているような。
セックスという名の断罪に遭わされているような。
腰を抱え込まれて下半身が浮き気味になったところへ高速ピストンの嵐。
隙間なく密着した腰が荒々しく波打ち、ペニスという杭で尻孔を穿たれて、青少年はエビ反りにまでなって淫らな責苦に身悶えた。
これまで何人もの男を咥え込んだ孔が宗方の杭に浄化されていくような心地に蕩けた。
『それぇ……こわれひゃ……ッッこわひてぇッ、おれの汚い豚穴ッ……ッ、ッぁッぁぅッ、ぁぅぅッ』
「そんな」
一度手がかりを見つければ波のように打ち寄せてきた記憶。
宗方は信じられなかった。
自分のしたことが。
そもそも性的な過ちなんてかつて一度も犯したことがなかった。
それがこんな酷い真似を。
レイプじゃないか。
介抱しようとしてくれた相手を、こんな華奢な青少年に、そんな。
「すまない」
また謝ってきた宗方を煙たそうにするでもなく青少年はじっと見つめた。
寄せられた眉根に滲み出る煩悶。
眼鏡レンズの下で真摯に据わった双眸。
「無表情もそそられたけど。そーいう顔もいいね、神父さん」
「俺は神父じゃない、宗方惣二、司法書士だ」
「司法書士。おかたそう」
「本当にすまな……」
全裸で謝罪なんて根本から間違ってやしないか。
「……服はどこだろう、ちゃんと君に謝罪したい、こんな状態じゃあとても、」
「謝罪? オレに? ふーーーーん。じゃあセックスで謝罪して」
果たしてそんな謝罪方法があるだろうか。
「アンタとセックスしたい、アンタに犯されたい、アンタに清められたい」
行き場に迷っていた宗方の手をとった青少年は、綺麗に整えられた爪の先をカリ、と仔猫のようにかぢった。
「オレの欲求を叶えるのが真の謝罪じゃないの?」
真の謝罪とは何ぞや……。
真面目な宗方は呆気にとられ、逡巡し、打ち消し、一先ず服を、しかし青少年に抱きつかれ、その瑞々しい白肌に動揺し、年上好きの自分にはまるで免疫のないピチピチぶりに困惑し、興奮するわけでもなく、すんなり青少年の欲求を聞いてやるわけにもいかず……。
「勃ててあげる」
「ッ……駄目だ、そんなこと」
「オレはアンタがめちゃくちゃ欲しーんだよ、宗方、謝罪する気があんならオレのお願い、きいて」
「……君は……君の名前は?」
宗方に名前を聞かれた青少年は真朱色の唇を綻ばせた。
「ミヤ」
一瞬、宗方はどうして突然「みゃあ」と彼は鳴いたのだろうかと首を傾げそうになった……。
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