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彼のMr.Kaleidoscope-3
『隣、いいですか?』
翌日、食堂で満永はいつものように隣にやってきた。
貴志は、ただ頷いた。
綺麗で哀れな満永を心から拒絶することができずに逡巡していた貴志であったが。
『あの……満永さん?』
すぐに後悔することになった。
その夜も満永の自宅へ招かれて。
ビーフシチューをちゃんと食べて。
導かれた座り心地のいいソファで仮初めいた静寂を痛感していたら。
不意に狭まった互いの距離。
警戒心を解いていなかった貴志が咎めるような眼差しですぐ真横に迫る満永を見れば隙のない微笑で一蹴された。
『満永さん、俺は……こういうことは』
『色んな貴志君を見せてください』
『……』
『君をもっと見せて?』
全力で抗えば押し返すことができた満永に貴志は押し倒された。
『ん……っ……っ』
完全に受け身となる口づけに冷静さが少しずつ崩されていった。
直接的な愛撫によって下半身に否応なしに発情を強いられた。
『あ……あ……っ……う、っ』
これまでの経験を凌駕する口内抱擁に貴志は腰砕けになった。
足の間に座り込んだ満永の唇奥でしとどに濡らされて、細やかに溺愛され、窮屈な喉口で締めつけられて。
『あ、あ、あ……あっあっ』
上擦る声が止まらなくなった。
器用過ぎる舌先がポイント毎に蠢き、舐め、吸い、時に水音を露骨に立て、頬張って、咀嚼して。
成す術がない。
快楽の渦に突き落とされた。
『もっと見せて』
一度の絶頂だけでは物足りずに満永は貴志を口内に閉じ込め続けた。
解剖・切り出しのメス捌きに長けた五指でペニスを撫で上げ、二つの膨らみまで掌に捕らえて巧みに刺激し、絶頂を刻んだばかりの先端を舌尖で甲斐甲斐しくしごき続けた。
姿勢を保てずに背もたれに深く沈むように崩れ落ちた貴志を呑み干したいと言わんばかりに。
『はぁ……っはぁ……っはぁ……っ』
『貴志君、もっと』
『みつ、なが、さ……』
これまで誰にも踏み込まれることのなかった肉奥の性感帯まで指先で暴かれて、貴志は、仰け反りながら思った。
『君の限界まで僕に見せて?』
この人とこのまま一緒にいたらきっと俺は壊される。
壊れる。
『僕を一人にしないで、お願いです、貴志君』
夜明けを控えた暁の刻。
日を跨いで夜通し続けられた口淫に心身が廃れかけながらも、何とか気力を振り絞り、貴志は満永の元を再び去ろうとした。
『行かないで』
振り返らずにそのまま去ればいいものを。
振り返り、儚げに涙していた満永を見つけて、貴志はまた出口を前に立ち竦んでしまう。
置き去りにできずに手を差し伸べてしまう。
綺麗で哀れな満永に心から寄り添ってしまう。
『貴志君……貴志君……』
涙ながらに満永に口づけられて溺死しそうな幻想に沈んだ。
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