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甘いあまいアナタ-6
【愛しの目隠し鬼さん】
翔吾と司がはっきりした性的興奮を自覚したのは奇しくも同じタイミングだった。
それは小学校五年生の頃。
昼休みの教室、担任だった里見が生徒達に誘われて古風な遊びを始めたのがきっかけだった。
「鬼さん、こちら!」
「手の鳴る方へ!」
午前中、道徳の授業で昔懐かしいわらべ歌や遊びを取り上げていたので、そんな展開になったのだろう。
目隠し鬼。
普段は大人びている女の子達が満面の笑みではしゃぎながら手を叩いている。
鬼役は里見だった。
生徒から借りたハンカチで目隠しし、ふんわり唇を和らげ、手探りで教室の中をぎこちなく進む。
騒がしい中央から離れ、窓際の机に座って給食を食べていた翔吾と司は、正に釘づけになっていた。
微笑む目隠し鬼から一度だって視線を逸らせなかった……。
「はい、先生」
「……これ、手ぬぐい? 綺麗な柄だね」
「買うつもりなんてなかったんだけど、目について」
「センセェ似合うよ、絶対!」
司の部屋にて。
まだ明るい外を遮るように閉ざされたカーテン、薄暗いリビングのレザーソファ、翔吾と司の間に座った里見は首を傾げた。
「似合う……?」
里見の手には赤地に白の花模様散らばる手ぬぐいが。
「目隠し鬼しよ!」
「それはまた……随分と懐かしい遊びだね」
「小学生の頃、先生、教室で一回やってたよ?」
「本当?」
忘れちゃったなぁ。
里見はそっと笑いながら、元教え子からの急な提案にまごつくでもなく、手ぬぐいを目元に巻こうとした。
どれだけ肌を重ねようと、いつまでも二人を子供扱いしている元担任なので、大した違和感は抱いていないらしい。
「俺がするから」
司は里見から受け取った手ぬぐいをゆっくり彼の目元に巻いていく。
「きつくない?」
「うん、大丈夫」
翔吾はすぐ隣で童心を取り戻したように目を輝かせながら見守っている。
司はすぐ解けないよう、きつすぎないよう、里見の後頭部にきゅっと手ぬぐいを結びつけた。
「鬼さんこちら!」
「手の鳴るほうへ」
十九歳の青年二人が楽しそうに手を鳴らす。
まるで子犬でも相手にしているかのように三十三歳の里見を呼ぶ。
テーブルのないリビングは障害物が少なく比較的安全だ。
それでも視覚が閉ざされていると不安なものだ。
里見は慎重に一歩ずつ進む。
「鬼さん、こっちだよ、こっち!」
翔吾が騒音紛いの大声を出して里見の進路方向を操作しようとする。
司は一定のリズムで手を鳴らし続ける。
その結果。
「捕まえたっ」
里見が飛び込んだ先は司の胸だった。
支えを見つけたことで仄赤い暗闇に強いられていた緊張感が途切れ、ほっとした彼は声を立てて笑う。
いつになく強い力でぎゅっと司にしがみついてくる。
「司君……だよね? こんなにどきどきしたの、久し振りだよ」
童心を最も取り戻していたのは里見だったようだ。
自分を抱き止めてくれる両腕の中で、華やいだ声音で司に話しかけてきた。
「ほら、次は君の番だよ?」と、言って目元に巻かれた手ぬぐいを解こうとする里見を司はやんわり遮った。
「待って、先生、そのまま」
「え?」
司の声に里見は顔を上げ、司は、目隠しされたままの里見にキスした。
「司、く……」
思わず呼びかけようとしたら口内に舌が滑り込んでくる。
柔らかな唇を食むように、舌伝いに微熱を得るように。
司は里見にキスを繰り返した。
「ふ……、……っ、ぁ」
不意に背中に体温を感じたかと思うと、するりと、正面に両腕が回された。
司に甘く口づけられている里見に翔吾が背中から抱き着いてきたのだ。
「センセー……俺もしたい」
そう悪戯っぽく囁くと、いきなり里見の顔の向きを自分の方へ変え、司の温度が鮮明に残る唇を甘噛みしてきた。
三人は立ったまま重なり合ってキスに溺れた。
翔吾と司が勢い余って里見の唇を一度に共有することもあった。
「は、ぁ……っ……」
赤い布で目隠しした里見の姿は以前よりも扇情的に感じられた。
その内キスだけじゃ物足りなくなり、熱に急かされた手が愛しい目隠し鬼の肌の上を彷徨い始めた。
口元で絶え間なく水音を鳴らしながら服を乱して五指を直に這わせる。
次の行為が予測しづらい里見はちょっと身を竦ませて、唇が解放された瞬間、咄嗟に二人に問いかけた。
「目隠し、もう外していいかな」
二人は里見越しに思わず顔を見合わせた。
「……先生、ソファ、行こうか」
「立ってるのきついでしょ?」
二人は里見の問いかけをスルーすることにした。
寝室へ移動する僅かな時間も惜しく、レザーソファに里見を横向きに座らせる。
当然という風にその前後に腰を据えた二人。
里見の服を分担しててきぱき脱がしていく。
足元に座っている翔吾はご丁寧に靴下まで足先から蔑ろにしていた。
服を着たままの二人の狭間であっという間に裸にされ、里見は、さすがに赤面する。
普段は緊張することもなく、すべて受け止めてくれる二人にありのまま身を委ねるのだが。
目隠しという不慣れなシチュエーションに戸惑ってしまう。
反対に未成年二人の興奮は高まる一方だった。
「センセェ、やっぱすっげー目隠し似合う……」
床に座り込んだ翔吾は赤面する目隠し里見を上目遣いに火照った眼差しで仰ぎつつ、発熱しかけの隆起を口に含み、唾液を塗りつけた。
「ん……っ」
「俺、ずっと先生の鬼でいてもいい?」
司の声が耳元に落ちたかと思うと、ぴちゃりと、くぐもった水音が鼓膜を震わせた。
舌先で耳たぶを嬲られる。
歯列がキリリと浅く埋まる。
「先生のこと、ずっと追いかけてもいい?」
見えない司を見ようとしていたら唇を塞がれた。
無防備に招いてやればゆっくりと口腔を犯される。
繊細な指先が胸の突端で小さな弧を描く。
「ぁ……っふぁ……ぁ」
背後に座る司から淡く色づく突起を愛撫されるのと同時に深いキスを注がれて、上擦った声を洩らす里見に、翔吾はうっとり見蕩れていた。
口の中の隆起をより強く吸い上げれば、舌粘膜に伝わる脈動が確かに強くなるのを素直に嬉しく思う。
舌尖で先端を隈なく湿らせてやれば、割れ目から溢れ出す先走りの感触につい喉を鳴らしてしまう。
括れた繋ぎ目に食いついてみたら緩く立てられていた膝がぶるっと揺れた。
視界に里見の裸足が過ぎって、翔吾は、欲望赴くままに……。
「……、え……っ?」
里見はびっくりした。
それまで司と絡めていた舌を思わず解いて、見えない翔吾へ視線を向ける。
「翔吾君、どこを……」
「んー? センセェの綺麗な足、舐めてっけど?」
中性的に整った顔立ちにれっきとした欲情を孕ませ、翔吾は、強張っていた里見の足指にしゃぶりつく。
踵を支え、硬く丸まっている足指の一本一本を解すように、丁寧に。
卑猥な水音が露骨に響いた。
「だめ、だめだよ……今すぐやめなさい」
「えー? やだ」
「翔吾君……ぁっ」
「先生、もっと力抜いて、俺に体預けて?」
司は紅潮していた里見の頬を大胆に舐め上げた。
翔吾の口内で満遍なく濡らされた隆起をおもむろにしごき始める。
二人の奏でる水音が鼓膜で混ざり合って、二人に惜しみなく捧げられる前戯が全身を打ち震わせ、里見は呻吟した。
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